呟きたいときくるところ
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ハロー、ゼトア。
・・・誰だ?
それが、初めて交わした言葉。
あれから十数年、私は彼の側に居た。
そして、同時に世界のあちこちにも出没した。
こちらに居て、あちらに居て、そちらにも居る。
あたしは世界のどんなところへも自由に移動できた。
それも時間を一切かけることもなく、次の瞬間には行きたいと思ったところへ行けた。
その力はイェーヴォーの感知するところではなく、真実、あたしの力として持っていた。
この世界の被造物でもなく、イェーヴォーの使徒でもなく。
そして、夢見人と呼ばれるものですらなく。
それが何を意味するのかを知っているのは、あたしとイェーヴォーだけ。
そんなわけのわからないあたしにゼトアは何も聞かず、何かに利用することもなく、側に置いてくれた。
ゼトアは優しい、そして愚直とみえるほど忠誠心に篤かった。
けれどその愚かさが、愛おしくてたまらない。
あたしはゼトアに協力することは出来なかったけど、ゼトアを愛していた。
ずっとずっと、本当は彼を助けたくてたまらなくて。
けれどそれをしたら、あたしはあたしのせいでこの世界を壊してしまうことになる。
そうしたら、芋づる式にゼトアに被害が行ってしまう。
それだけはなんとしても避けたかった。
たとえあたしが側に居られなくても、彼が無事でいて欲しかった。
メレヒ・アレスもバール=ハッザトにも興味はない。
勿論、この世の主神たるイェーヴォーすら眼中にないのだ。
そのあたしが、これだけは大事だと想うのはゼトア1人だった。
そんなこと、口が裂けても言えないけれど。
「ヨナタン、何でそんなに不貞腐れているの」
「不貞腐れてなんかいない」
「だって、とても面白くなさそうよ。
ギンバールとシェリマが気になるの?」
「そっ・・そんなわけないじゃないか!」
「やだ、怒鳴らないでよ、冗談じゃない」
ため息をついていなせば、ヨナタンは不服そうな顔で黙った。
バルタンの屋敷に滞在するようになってから、ギンバールとシェリマの急接近ぶりが目に付いたのだろう。
あれだけ最初は嫌がるそぶりをしていたシェリマが、今では逆に嬉しそうにギンバールと話している。
それが不可解であり、シェリマの父バルタンが何もそのことに触れないのも、またわからないでいる。
お子様にはわからないのだと言えば早いが、そうすればまた機嫌を損ねるだろう。
人なんて、本当に面倒だ。
「ヨナタン、それより英知の庭へ行く順路を話し合っていたんでしょう」
隣から、バルタンが声をかける。
苦笑が浮かぶその顔は、ヨナタンを小さな子供であるかのように見つめていた。
手のかかる子供を見守る父といった風情だ。
ダナはヨナタンとバルタンから視線を外すと、小さくため息をついた。
あたしの道は、どこへ続いているのかさっぱりわからないのに。
セダノールへようやっとついたヨナタンの、次の、いや最終的な目的地は英知の庭だ。
そこにいるゴエルへ杖ハシェベトを届けるのが最終目的だと思っている。
彼はそこから出られないので、担い手に選ばれた自分が届けなくてはいけない、と。
確かにそれは間違ってはない、しかし、まだ半分だ。
第七代裁き司にハシェベトが渡らねば、世界は終わる。
そう信じ込んでいるヨナタンは、自身がただの担い手であることしか頭にない。
真実、彼は英知の庭に行けば全てが終わると思っている。
しかし結局のところ、第七代の裁き司はヨナタンなのだ。
いや、ヨナタンと、もう1人が融合して初めて裁き司として一人前になる。
彼の夢の兄弟はネシャンとは別の世界、かつてダナが居た世界で生きている。
イングランドに忠誠を誓う貴族の後継者として、足の代わりに車椅子を駆使しながら。
夢の兄弟はジョナサンといい、彼とヨナタンは夢でお互いが繋がっていることを知っている。
彼らは英知の庭に辿りついたとき、初めて1つになるかならないかを選択させられるのだ。
それをまだ知らないヨナタンは、本当に自分は裁き司ではありえないと思っている。
ダナにはそれがなんだか物足りなく思われた。
全部喋ってしまいたい。
全てを知ってる自分が、ここに居るのだから。
しかしそれは許されたことではない。
ダナはただの管理人でしかない自分の身を恨んだ。
ゼトアの側に居られないのも。
彼に協力することも、真実を暴露することが出来ないのも。
全ては、ダナの身分によるものが大きかった。
彼女は人知を超えたイェーヴォーと相対しても可笑しくない身分を持っていた。
しかしそれには制約も多く、彼女はいつも苦しんでいた。
もとは人として生きていた少女だ。
それが突然、人であることをやめねばならなくなった。
当然、ダナにとって、それはとても容易に受け入れられるものではなかった。
人間は集団生活をするように刷り込まれ、成長していく。
その集団生活から外れることは、大体において勇気がいるものだ。
ダナはまだ精神が成長しきらないときに、それを強制された。
当然彼女は拒否したし、精神崩壊の一歩手前まで追い詰められた。
それを救ってくれたのはまた別の世界にいる人間だったが・・ダナは今もこうしてここにいる。
大事なものと、自分の使命を切り離して考えることを身に着けたから、あたしはここにいる。
まだ、ここに居られる。
忌まわしいと思いながら、それが救いであると感じてしまう己が哀れだった。
ダナは話し合うヨナタンとバルタンを見ながら、ゼトアを思い出してしまう自分を否めなかった。
・・・誰だ?
それが、初めて交わした言葉。
あれから十数年、私は彼の側に居た。
そして、同時に世界のあちこちにも出没した。
こちらに居て、あちらに居て、そちらにも居る。
あたしは世界のどんなところへも自由に移動できた。
それも時間を一切かけることもなく、次の瞬間には行きたいと思ったところへ行けた。
その力はイェーヴォーの感知するところではなく、真実、あたしの力として持っていた。
この世界の被造物でもなく、イェーヴォーの使徒でもなく。
そして、夢見人と呼ばれるものですらなく。
それが何を意味するのかを知っているのは、あたしとイェーヴォーだけ。
そんなわけのわからないあたしにゼトアは何も聞かず、何かに利用することもなく、側に置いてくれた。
ゼトアは優しい、そして愚直とみえるほど忠誠心に篤かった。
けれどその愚かさが、愛おしくてたまらない。
あたしはゼトアに協力することは出来なかったけど、ゼトアを愛していた。
ずっとずっと、本当は彼を助けたくてたまらなくて。
けれどそれをしたら、あたしはあたしのせいでこの世界を壊してしまうことになる。
そうしたら、芋づる式にゼトアに被害が行ってしまう。
それだけはなんとしても避けたかった。
たとえあたしが側に居られなくても、彼が無事でいて欲しかった。
メレヒ・アレスもバール=ハッザトにも興味はない。
勿論、この世の主神たるイェーヴォーすら眼中にないのだ。
そのあたしが、これだけは大事だと想うのはゼトア1人だった。
そんなこと、口が裂けても言えないけれど。
「ヨナタン、何でそんなに不貞腐れているの」
「不貞腐れてなんかいない」
「だって、とても面白くなさそうよ。
ギンバールとシェリマが気になるの?」
「そっ・・そんなわけないじゃないか!」
「やだ、怒鳴らないでよ、冗談じゃない」
ため息をついていなせば、ヨナタンは不服そうな顔で黙った。
バルタンの屋敷に滞在するようになってから、ギンバールとシェリマの急接近ぶりが目に付いたのだろう。
あれだけ最初は嫌がるそぶりをしていたシェリマが、今では逆に嬉しそうにギンバールと話している。
それが不可解であり、シェリマの父バルタンが何もそのことに触れないのも、またわからないでいる。
お子様にはわからないのだと言えば早いが、そうすればまた機嫌を損ねるだろう。
人なんて、本当に面倒だ。
「ヨナタン、それより英知の庭へ行く順路を話し合っていたんでしょう」
隣から、バルタンが声をかける。
苦笑が浮かぶその顔は、ヨナタンを小さな子供であるかのように見つめていた。
手のかかる子供を見守る父といった風情だ。
ダナはヨナタンとバルタンから視線を外すと、小さくため息をついた。
あたしの道は、どこへ続いているのかさっぱりわからないのに。
セダノールへようやっとついたヨナタンの、次の、いや最終的な目的地は英知の庭だ。
そこにいるゴエルへ杖ハシェベトを届けるのが最終目的だと思っている。
彼はそこから出られないので、担い手に選ばれた自分が届けなくてはいけない、と。
確かにそれは間違ってはない、しかし、まだ半分だ。
第七代裁き司にハシェベトが渡らねば、世界は終わる。
そう信じ込んでいるヨナタンは、自身がただの担い手であることしか頭にない。
真実、彼は英知の庭に行けば全てが終わると思っている。
しかし結局のところ、第七代の裁き司はヨナタンなのだ。
いや、ヨナタンと、もう1人が融合して初めて裁き司として一人前になる。
彼の夢の兄弟はネシャンとは別の世界、かつてダナが居た世界で生きている。
イングランドに忠誠を誓う貴族の後継者として、足の代わりに車椅子を駆使しながら。
夢の兄弟はジョナサンといい、彼とヨナタンは夢でお互いが繋がっていることを知っている。
彼らは英知の庭に辿りついたとき、初めて1つになるかならないかを選択させられるのだ。
それをまだ知らないヨナタンは、本当に自分は裁き司ではありえないと思っている。
ダナにはそれがなんだか物足りなく思われた。
全部喋ってしまいたい。
全てを知ってる自分が、ここに居るのだから。
しかしそれは許されたことではない。
ダナはただの管理人でしかない自分の身を恨んだ。
ゼトアの側に居られないのも。
彼に協力することも、真実を暴露することが出来ないのも。
全ては、ダナの身分によるものが大きかった。
彼女は人知を超えたイェーヴォーと相対しても可笑しくない身分を持っていた。
しかしそれには制約も多く、彼女はいつも苦しんでいた。
もとは人として生きていた少女だ。
それが突然、人であることをやめねばならなくなった。
当然、ダナにとって、それはとても容易に受け入れられるものではなかった。
人間は集団生活をするように刷り込まれ、成長していく。
その集団生活から外れることは、大体において勇気がいるものだ。
ダナはまだ精神が成長しきらないときに、それを強制された。
当然彼女は拒否したし、精神崩壊の一歩手前まで追い詰められた。
それを救ってくれたのはまた別の世界にいる人間だったが・・ダナは今もこうしてここにいる。
大事なものと、自分の使命を切り離して考えることを身に着けたから、あたしはここにいる。
まだ、ここに居られる。
忌まわしいと思いながら、それが救いであると感じてしまう己が哀れだった。
ダナは話し合うヨナタンとバルタンを見ながら、ゼトアを思い出してしまう自分を否めなかった。
PR
あぁ、どうしてだろう、理解出来ない。
こんな風に頭が痛くなったことなど、この数百年なかった。
これは、この人の子らのせい?
じくじくと疼く痛みに、きゅっと眉根を寄せた。
「・・うぅ、ここは・・・」
そうしている間に、1人、目を覚ましてしまった。
人にこちらの存在を認識させるつもりはなかった。
すぐにでも、消えるつもりであったのに。
いつにない頭痛に戸惑い、行動に移すのが送れ、つい立ち尽くす。
動けず、ただただ目を覚ました人の片割れを凝視する。
こんな時にどうすればいいかわからないなんて、私も随分鈍ったものだ。
昔、命を奪い合う戦場で生きていた頃だったらきっと次の瞬間には死んでいた。
1人になって、静かな時間を生きて、随分自分は衰えてしまったのだろう。
その事実に気づき、なんだか物悲しくなってしまったことを否めなかった。
「・・・・はっ!え、えーと・・・な、ナウシカ!ナウシカ、無事か?」
傍らで身動きをしない少女に焦ったのか、少年が大慌てで起き上がり、声をかける。
ぺたぺたと顔や頭に触れ、口元に手をやり息をしていることに安堵する。
「おーい・・て、だめか・・・完全に気絶し、て・・・えぇっ」
一つため息をつき、頭に手をやりながら呟いていた少年が、途中でこちらに気づいた。
こんなところに自分達以外の生物、ましてや人の形をしているものがいるとは思わなかったのだろう。
ここは腐海の最深部の地下世界だ。
こんなところがあるとすら知らなかったはずだ。
そこに、居た、人と同じもの。
少年の内心を推して知るべしというところか。
未だちくちく痛む頭に悩まされながらも、そんなことを思った。
「だ、誰だっ」
慌てて、少女を庇いながらも体を伏せ、こちらを威嚇する。
それを問いたいのはこちらのほうだというのに。
しかし、先ほど少年の口にした少女の名が、頭に引っかかる。
何故か知っている気がした。
「・・・・お前達が、誰か。
相手に名を問うのなら、自分から名乗るが礼儀では」
「・・・っ俺は、ペジテのアスベルだ!
お前は・・・何故ここにいる!?
腐海の地下だぞ」
「私の名は、とうの昔に捨てた。
ここは私の住処だ、何故と言われても困る」
「こっ・・答えになってない!」
淡々と応えることに、少年・・アスベルが激高する。
人の子にとってはとても理解し難いことなのだろう。
人の棲めない腐海の森の下に地下があって、あげくそこに誰かがいることが。
名を問われたところで、答えなどないのだ。
遥か昔、人であることを辞めたときに捨てたのだから。
それからずっと、ここで生きてきた。
「名は、私にとって何の意味も成さぬ故、捨てた。
ここに私以外の生物は居らぬ。
少女が目を覚ましたら、去れ」
「・・・・あんたは一体、何なんだ・・」
我関せず、言葉が通じないといった風情で一方的に告げると、アスベルは肩を落とした。
力が抜けたらしい彼を一瞥し、最後の問いへ答える。
「私は・・・ただのバケモノだ」
ふわり、少し悲しげに微笑む少女を見て、アスベルがほのかに頬を染めた。
それだけを告げると、くるりと背を向ける。
後ろでまだアスベルが何か言っているのが聞こえたが、全て無視をした。
いつの間にか、頭痛は消えていた。
こつり、幹に頭を預け、また落ちて来る砂を眺める。
あれから数時間ほどで少女が目覚めると、やがて彼らは翌朝に発って行った。
彼らにも行かねばならぬところがあり、やらねばならぬことがあろう。
私のように、時間に置いていかれたバケモノと関わる必要などないのだ。
影からその姿を見送ると、そうして、また考え事に没頭した。
少女の容姿、白い船、アスベルとナウシカという名・・・
何かが引っかかっているのに、それが一向に何かわからない。
何故わからないのに、こんなにも気になるのだろう。
何が気になるのかすらわからないというのに。
きっと、彼らは私が人であった頃、何か深く心に刻まれたことに関連しているのだろう。
それしかわからない。
人でなくなってから、どれ程時が経った?
私が人であることを辞めて、幾年の月日が経った?
その間に人々はどのような発展をしたのだろう。
この世界の発端はなんだったか。
あぁ、頭が痛い。
どうして、こんなに胸が揺さぶられるのだろう。
こんなに苦しいのは、涙が出てくるのは、何故・・?
最後に泣いたのはいつだったか。
それすら思い出せないほどの月日を、1人で生きてきたのか。
その事実に、ただ浸る。
答えが出ないこの砂だけの世界で、ただ泣いた。
こんな風に頭が痛くなったことなど、この数百年なかった。
これは、この人の子らのせい?
じくじくと疼く痛みに、きゅっと眉根を寄せた。
「・・うぅ、ここは・・・」
そうしている間に、1人、目を覚ましてしまった。
人にこちらの存在を認識させるつもりはなかった。
すぐにでも、消えるつもりであったのに。
いつにない頭痛に戸惑い、行動に移すのが送れ、つい立ち尽くす。
動けず、ただただ目を覚ました人の片割れを凝視する。
こんな時にどうすればいいかわからないなんて、私も随分鈍ったものだ。
昔、命を奪い合う戦場で生きていた頃だったらきっと次の瞬間には死んでいた。
1人になって、静かな時間を生きて、随分自分は衰えてしまったのだろう。
その事実に気づき、なんだか物悲しくなってしまったことを否めなかった。
「・・・・はっ!え、えーと・・・な、ナウシカ!ナウシカ、無事か?」
傍らで身動きをしない少女に焦ったのか、少年が大慌てで起き上がり、声をかける。
ぺたぺたと顔や頭に触れ、口元に手をやり息をしていることに安堵する。
「おーい・・て、だめか・・・完全に気絶し、て・・・えぇっ」
一つため息をつき、頭に手をやりながら呟いていた少年が、途中でこちらに気づいた。
こんなところに自分達以外の生物、ましてや人の形をしているものがいるとは思わなかったのだろう。
ここは腐海の最深部の地下世界だ。
こんなところがあるとすら知らなかったはずだ。
そこに、居た、人と同じもの。
少年の内心を推して知るべしというところか。
未だちくちく痛む頭に悩まされながらも、そんなことを思った。
「だ、誰だっ」
慌てて、少女を庇いながらも体を伏せ、こちらを威嚇する。
それを問いたいのはこちらのほうだというのに。
しかし、先ほど少年の口にした少女の名が、頭に引っかかる。
何故か知っている気がした。
「・・・・お前達が、誰か。
相手に名を問うのなら、自分から名乗るが礼儀では」
「・・・っ俺は、ペジテのアスベルだ!
お前は・・・何故ここにいる!?
腐海の地下だぞ」
「私の名は、とうの昔に捨てた。
ここは私の住処だ、何故と言われても困る」
「こっ・・答えになってない!」
淡々と応えることに、少年・・アスベルが激高する。
人の子にとってはとても理解し難いことなのだろう。
人の棲めない腐海の森の下に地下があって、あげくそこに誰かがいることが。
名を問われたところで、答えなどないのだ。
遥か昔、人であることを辞めたときに捨てたのだから。
それからずっと、ここで生きてきた。
「名は、私にとって何の意味も成さぬ故、捨てた。
ここに私以外の生物は居らぬ。
少女が目を覚ましたら、去れ」
「・・・・あんたは一体、何なんだ・・」
我関せず、言葉が通じないといった風情で一方的に告げると、アスベルは肩を落とした。
力が抜けたらしい彼を一瞥し、最後の問いへ答える。
「私は・・・ただのバケモノだ」
ふわり、少し悲しげに微笑む少女を見て、アスベルがほのかに頬を染めた。
それだけを告げると、くるりと背を向ける。
後ろでまだアスベルが何か言っているのが聞こえたが、全て無視をした。
いつの間にか、頭痛は消えていた。
こつり、幹に頭を預け、また落ちて来る砂を眺める。
あれから数時間ほどで少女が目覚めると、やがて彼らは翌朝に発って行った。
彼らにも行かねばならぬところがあり、やらねばならぬことがあろう。
私のように、時間に置いていかれたバケモノと関わる必要などないのだ。
影からその姿を見送ると、そうして、また考え事に没頭した。
少女の容姿、白い船、アスベルとナウシカという名・・・
何かが引っかかっているのに、それが一向に何かわからない。
何故わからないのに、こんなにも気になるのだろう。
何が気になるのかすらわからないというのに。
きっと、彼らは私が人であった頃、何か深く心に刻まれたことに関連しているのだろう。
それしかわからない。
人でなくなってから、どれ程時が経った?
私が人であることを辞めて、幾年の月日が経った?
その間に人々はどのような発展をしたのだろう。
この世界の発端はなんだったか。
あぁ、頭が痛い。
どうして、こんなに胸が揺さぶられるのだろう。
こんなに苦しいのは、涙が出てくるのは、何故・・?
最後に泣いたのはいつだったか。
それすら思い出せないほどの月日を、1人で生きてきたのか。
その事実に、ただ浸る。
答えが出ないこの砂だけの世界で、ただ泣いた。
さらさらさら・・・・
頭上から降り積もる白く美しい砂が奏でる音のみが支配する地下世界。
ここは、太古の昔から続く森の下に、死んだ木々の墓場として存在している。
そして木々の身が朽ち、砂となって生まれ変わる再生の広場でもある。
広いこの地下世界で生物として存在するのは、太古の昔より森と共に存在する少女のみ。
零れた陽の光が点々と世界を明るく灯しているとは言え、彼女は基本的に影に居る。
その為、肌理細やかな肌は白く、艶やかな髪は白を通り越し銀髪になっていた。
かつて地上に存在していた頃は彼女の髪にも色があった。
ただの人間として、人々の中で暮らしていた頃。
人並みよりは多少白い肌と、こげ茶の髪。
髪と同じ色の瞳で、周りの人々と笑いあっていた、かつて人間だったあの頃は。
それも今は既に過ぎ去った遠い昔のことである。
彼女の瞳は、地下に生きるものに相応しいというかのような、血の色をしていた。
地下世界に光が差し込む前、数百年を暗闇で過ごしたことが原因か。
彼女の目から、髪から色が喪われてしまったのだ。
その目が退化するまでには至らなかったのが救いだった。
闇の中では、何も問題がないように動けるその目は、陽の光にはやはり弱い。
しかし、ないとあるとでは違いすぎるものだから。
しゃらりしゃらりと零れる砂はきらきらと光り、毎日、彼女を照らす。
陽が高くなった頃、ふらり、寝床にしていた木の上から姿を現した。
長くなりすぎて引きずるほど伸びた髪が、光りに反射してきらきらと輝く。
少女の見掛けで幾歳になったのか自分でもわからない彼女は、物憂げに天を仰ぐ。
毎日やることなどない、ただ砂と死んだ樹に満ちる水音が彼女の世界を支配する。
人の身でなくなったのは、いつの頃だったろう。
随分永く、そんなこと考えなかったのに。
最近になってそんなことを思うようになったのは、やはり。
この世界に落ちてきた、少女達のせいだろう。
あの日も、いつもどおり、ただ時の流れるままに過ごすはずだった。
頭上の森でなにやら虫たちが騒ぎ、爆発音が度々聞こえた気がしていた。
それが何を意味するのかなど、人をやめた身では到底気にすることでもない。
ただ砂の流れ落ちる様をぼんやりと眺めていただけだった。
零れ落ちる砂の到着点から、ゆっくり上へと目線を移動させる。
きらきら光る、陽と同じ場所から砂が零れてゆく。
ただ見ているだけでも、何故か目が離せなくなるものだった。
そこへ。
「・・・・・?」
白い、見慣れない形状の物体がずずず、と姿を現してきた。
いや・・・何処かで、はるか昔に、見た。
あぁ、私はあれを、知っている気がする。
ずりずりと堕ちてくるに連れ、やがてその全容が見えてくる。
そしてそのおまけ達まで。
「・・・・・なんぞ、あったか」
ぽつり、思わず呟く。
結局地下へと堕ちてきたものは、白い無機物と、2人の人間だった。
随分目にしてないものたちだったから、彼女はそれらから目が離せなくなった。
白い物体は、羽が2つあることから、どうやら空を飛べるものであるらしい。
堕ちてきた人間のどちらかが所有者であろうことは、想像に難くない。
突起が2つに、その間にベルトがかけられている。
見た目から1人乗りのものだろうと検討をつけたところで、何かが頭をよぎった。
かつての記憶の1つだろうと思いつつ、それに頓着せず、今度は人へと目を向ける。
全体的に茶系でまとめられた・・・男、それもまだ若い。
それから、青い服と靴を履いた・・・少女だ。
ここまで考えて、またもやフラッシュバックに襲われる。
脳が、何かを思い出そうとしているらしい。
けれど、それがあまりにも昔のことなので、容易に思い出せないのだ。
じくじくと疼く頭を持て余しながら、2人を見つめる。
耳より少し下くらいの亜麻色の髪、赤いピアス、青い服と靴の少女。
生成りの上着に茶色のズボン、同色の靴、黒い髪の少年。
あぁ・・・、どうして、こんなにも心が揺さぶられるのだろう。
この2人が一体なんだというのだろう。
頭が揺れる感覚に思わず目を閉じ、数秒耐える。
何故、こんなにも苦しい。
たかが人間の子供が2人、堕ちて来ただけだというのに。
こんなのは、初めてだ。
「うっ・・・」
くらくらする頭に意識を集中させていると、少年が身じろぎをした。
目が覚めるような気配がして、一瞬、まずいという思いが頭をよぎる。
人に見られたところでどうというものではないが、面倒ごとはごめんだった。
目を覚ませば、きっと関わらざるを得なくなるのは明白。
彼女は、咄嗟に身を引くも、ずるずると長い髪がその身の動きを邪魔した。
ぐらりと体が傾き、慌てて体勢を立て直す。
その間にも、少年はごろりと寝返りをうつと、意識を取り戻してしまっていた。
<続>
頭上から降り積もる白く美しい砂が奏でる音のみが支配する地下世界。
ここは、太古の昔から続く森の下に、死んだ木々の墓場として存在している。
そして木々の身が朽ち、砂となって生まれ変わる再生の広場でもある。
広いこの地下世界で生物として存在するのは、太古の昔より森と共に存在する少女のみ。
零れた陽の光が点々と世界を明るく灯しているとは言え、彼女は基本的に影に居る。
その為、肌理細やかな肌は白く、艶やかな髪は白を通り越し銀髪になっていた。
かつて地上に存在していた頃は彼女の髪にも色があった。
ただの人間として、人々の中で暮らしていた頃。
人並みよりは多少白い肌と、こげ茶の髪。
髪と同じ色の瞳で、周りの人々と笑いあっていた、かつて人間だったあの頃は。
それも今は既に過ぎ去った遠い昔のことである。
彼女の瞳は、地下に生きるものに相応しいというかのような、血の色をしていた。
地下世界に光が差し込む前、数百年を暗闇で過ごしたことが原因か。
彼女の目から、髪から色が喪われてしまったのだ。
その目が退化するまでには至らなかったのが救いだった。
闇の中では、何も問題がないように動けるその目は、陽の光にはやはり弱い。
しかし、ないとあるとでは違いすぎるものだから。
しゃらりしゃらりと零れる砂はきらきらと光り、毎日、彼女を照らす。
陽が高くなった頃、ふらり、寝床にしていた木の上から姿を現した。
長くなりすぎて引きずるほど伸びた髪が、光りに反射してきらきらと輝く。
少女の見掛けで幾歳になったのか自分でもわからない彼女は、物憂げに天を仰ぐ。
毎日やることなどない、ただ砂と死んだ樹に満ちる水音が彼女の世界を支配する。
人の身でなくなったのは、いつの頃だったろう。
随分永く、そんなこと考えなかったのに。
最近になってそんなことを思うようになったのは、やはり。
この世界に落ちてきた、少女達のせいだろう。
あの日も、いつもどおり、ただ時の流れるままに過ごすはずだった。
頭上の森でなにやら虫たちが騒ぎ、爆発音が度々聞こえた気がしていた。
それが何を意味するのかなど、人をやめた身では到底気にすることでもない。
ただ砂の流れ落ちる様をぼんやりと眺めていただけだった。
零れ落ちる砂の到着点から、ゆっくり上へと目線を移動させる。
きらきら光る、陽と同じ場所から砂が零れてゆく。
ただ見ているだけでも、何故か目が離せなくなるものだった。
そこへ。
「・・・・・?」
白い、見慣れない形状の物体がずずず、と姿を現してきた。
いや・・・何処かで、はるか昔に、見た。
あぁ、私はあれを、知っている気がする。
ずりずりと堕ちてくるに連れ、やがてその全容が見えてくる。
そしてそのおまけ達まで。
「・・・・・なんぞ、あったか」
ぽつり、思わず呟く。
結局地下へと堕ちてきたものは、白い無機物と、2人の人間だった。
随分目にしてないものたちだったから、彼女はそれらから目が離せなくなった。
白い物体は、羽が2つあることから、どうやら空を飛べるものであるらしい。
堕ちてきた人間のどちらかが所有者であろうことは、想像に難くない。
突起が2つに、その間にベルトがかけられている。
見た目から1人乗りのものだろうと検討をつけたところで、何かが頭をよぎった。
かつての記憶の1つだろうと思いつつ、それに頓着せず、今度は人へと目を向ける。
全体的に茶系でまとめられた・・・男、それもまだ若い。
それから、青い服と靴を履いた・・・少女だ。
ここまで考えて、またもやフラッシュバックに襲われる。
脳が、何かを思い出そうとしているらしい。
けれど、それがあまりにも昔のことなので、容易に思い出せないのだ。
じくじくと疼く頭を持て余しながら、2人を見つめる。
耳より少し下くらいの亜麻色の髪、赤いピアス、青い服と靴の少女。
生成りの上着に茶色のズボン、同色の靴、黒い髪の少年。
あぁ・・・、どうして、こんなにも心が揺さぶられるのだろう。
この2人が一体なんだというのだろう。
頭が揺れる感覚に思わず目を閉じ、数秒耐える。
何故、こんなにも苦しい。
たかが人間の子供が2人、堕ちて来ただけだというのに。
こんなのは、初めてだ。
「うっ・・・」
くらくらする頭に意識を集中させていると、少年が身じろぎをした。
目が覚めるような気配がして、一瞬、まずいという思いが頭をよぎる。
人に見られたところでどうというものではないが、面倒ごとはごめんだった。
目を覚ませば、きっと関わらざるを得なくなるのは明白。
彼女は、咄嗟に身を引くも、ずるずると長い髪がその身の動きを邪魔した。
ぐらりと体が傾き、慌てて体勢を立て直す。
その間にも、少年はごろりと寝返りをうつと、意識を取り戻してしまっていた。
<続>
ぽつ、ぽつ、ぴっしゃん
降り始めた雨が、世界を穿つ。
今、私の世界を支配しているのは、ただただ、地を打つ雨音だけだ、
しとしとと降り注ぐ冷たい雨が、体に心地よい。
あっという間に雨に覆われた世界で、既に濡れていないところなどないくらいびしょぬれになっているだろう自分が、ただ目を瞑って立ち尽くす姿はきっと傍目には異様に映るだろう。
けれどここは、この世界には、今自分以外に誰もいない。
何もない、ただ雨だけが支配する世界なのだ。
額を、瞼を、頬を、ひたひたと水滴が流れ落ちる。
体は既に冷たくなって、まるで雨と同化してしまっているような感覚を覚える。
さぁあああ・・・
地を打つ雨音が集うことで、音楽となって、やがて消える。
両手を軽くあげ、手のひらを天へと向ける。
体のそこかしこを打つ雨の感触を、音を、そしてその温度を感じる。
すぅ、と静かに瞼を開けても、まつげのおかげで目には入ってこない。
そのことに少し安心するも、何故かちょっぴり残念だった。
あぁ、こここそ、私の世界
ぴしゃん、
「・・・風邪ひくぞ」
傍らに、温かいものが寄ってきたことに気づいても、反応を返さない。
その人が、自分の中では雨と同じくらい大事なモノであるから、違和感がないのだと知る。
瞼をあけてそちらを見やれば、同じように濡れそぼった彼の姿が目に入った。
くすり、小さく笑えば、眉間に小さく皺が寄る。
「何が可笑しい」
「あなたまで濡れることないのに」
そう言い返せば、眉根を寄せたまま、少し黙る。
なんだか不承不承なようで、それがまた可笑しく思った。
「・・・・たまに雨に打たれるのも、いいかと思ってな」
苦しげな言い訳に、ついつい笑いを抑えられなくなる。
きっと私が雨に打たれているのを見て、また慌てて外に出てきたのだろう。
いつものことだというのに、過保護な人だと内心で笑いをかみ殺す。
「気持ちいいでしょ?」
「・・・いつも、雨が降ると外に居るな」
うふふ、と零れる笑みを抑えきれないまま、言葉を返す。
傍らの人が、ぽつり、零した言葉に、尚更可笑しくなってしまい困った。
体が冷えすぎることを心配しているのだろうこの人を思うと、何故か気持ちが浮かれた。
それにしても、今は暑いくらいの季節だから、このくらいの雨はなんてことはないのだ。
むしろ、涼を取れるくらいに思えば、願ってもない、雨。
それでも彼は、私の体を心配している。
この国にとって大事な身だ、何かあってからでは遅い。
彼の反応は、当たり前とも言えた。
「雨は好きよ」
呟くように零した言葉に、彼が答えることはない。
それはお互いに痛いほどよくわかっていることだからだ。
私の故郷は、水の郷と呼ばれるところだった。
そこから半ば無理矢理に、この国へ連れてこられた。
私をこの国に縛っているのは、他でもないこの人なのだ。
彼は、私が帰りたがっていることを知っている。
それでも、この国を思えば、私の願いを叶えてやるわけにはいかない。
今は、まだ。
「・・・体は丈夫なのよ、知ってるでしょ?」
暗に大丈夫だと返してみる。
それでもこの人を納得させるには足りないことを知っていた。
彼はただの人であるから、それは仕方のないことだということも。
私は人ではない、人から為ったバケモノなのだ。
それをただの人に理解させるのは難しい。
自分の価値観をそう簡単に覆せないように。
「・・・・・・この国に、雨がいつまでも降り続けるよう、俺も願っている」
傍らで零した言葉が、彼の本心全てでないことは知っている。
そして、それを私が理解していることを、彼もまた知っていた。
互いに深いところで相容れることはないけれど、きっとこれはこれでいいのだ。
全てを理解したいなんて、驕りでしかないのだから。
傍らの人が身動ぎしようとも、ただただ、雨に打たれ続けた。
雨は全てを覆い隠してくれる。
綺麗なことも、汚いことも。
見たくないことすらも。
今はそれでいい。
この国も、私も、この人も。
いつかこの雨が晴れるとき、またわかることもあるだろう。
ただ今は、ここに居るときだけは、人もバケモノもない。
個という生き物なのだ。
体に降り注ぐ雨が、汚いものまで洗い流してくれることを願いながら、まだしばらくそのままでいたいと思っていた。
降り始めた雨が、世界を穿つ。
今、私の世界を支配しているのは、ただただ、地を打つ雨音だけだ、
しとしとと降り注ぐ冷たい雨が、体に心地よい。
あっという間に雨に覆われた世界で、既に濡れていないところなどないくらいびしょぬれになっているだろう自分が、ただ目を瞑って立ち尽くす姿はきっと傍目には異様に映るだろう。
けれどここは、この世界には、今自分以外に誰もいない。
何もない、ただ雨だけが支配する世界なのだ。
額を、瞼を、頬を、ひたひたと水滴が流れ落ちる。
体は既に冷たくなって、まるで雨と同化してしまっているような感覚を覚える。
さぁあああ・・・
地を打つ雨音が集うことで、音楽となって、やがて消える。
両手を軽くあげ、手のひらを天へと向ける。
体のそこかしこを打つ雨の感触を、音を、そしてその温度を感じる。
すぅ、と静かに瞼を開けても、まつげのおかげで目には入ってこない。
そのことに少し安心するも、何故かちょっぴり残念だった。
あぁ、こここそ、私の世界
ぴしゃん、
「・・・風邪ひくぞ」
傍らに、温かいものが寄ってきたことに気づいても、反応を返さない。
その人が、自分の中では雨と同じくらい大事なモノであるから、違和感がないのだと知る。
瞼をあけてそちらを見やれば、同じように濡れそぼった彼の姿が目に入った。
くすり、小さく笑えば、眉間に小さく皺が寄る。
「何が可笑しい」
「あなたまで濡れることないのに」
そう言い返せば、眉根を寄せたまま、少し黙る。
なんだか不承不承なようで、それがまた可笑しく思った。
「・・・・たまに雨に打たれるのも、いいかと思ってな」
苦しげな言い訳に、ついつい笑いを抑えられなくなる。
きっと私が雨に打たれているのを見て、また慌てて外に出てきたのだろう。
いつものことだというのに、過保護な人だと内心で笑いをかみ殺す。
「気持ちいいでしょ?」
「・・・いつも、雨が降ると外に居るな」
うふふ、と零れる笑みを抑えきれないまま、言葉を返す。
傍らの人が、ぽつり、零した言葉に、尚更可笑しくなってしまい困った。
体が冷えすぎることを心配しているのだろうこの人を思うと、何故か気持ちが浮かれた。
それにしても、今は暑いくらいの季節だから、このくらいの雨はなんてことはないのだ。
むしろ、涼を取れるくらいに思えば、願ってもない、雨。
それでも彼は、私の体を心配している。
この国にとって大事な身だ、何かあってからでは遅い。
彼の反応は、当たり前とも言えた。
「雨は好きよ」
呟くように零した言葉に、彼が答えることはない。
それはお互いに痛いほどよくわかっていることだからだ。
私の故郷は、水の郷と呼ばれるところだった。
そこから半ば無理矢理に、この国へ連れてこられた。
私をこの国に縛っているのは、他でもないこの人なのだ。
彼は、私が帰りたがっていることを知っている。
それでも、この国を思えば、私の願いを叶えてやるわけにはいかない。
今は、まだ。
「・・・体は丈夫なのよ、知ってるでしょ?」
暗に大丈夫だと返してみる。
それでもこの人を納得させるには足りないことを知っていた。
彼はただの人であるから、それは仕方のないことだということも。
私は人ではない、人から為ったバケモノなのだ。
それをただの人に理解させるのは難しい。
自分の価値観をそう簡単に覆せないように。
「・・・・・・この国に、雨がいつまでも降り続けるよう、俺も願っている」
傍らで零した言葉が、彼の本心全てでないことは知っている。
そして、それを私が理解していることを、彼もまた知っていた。
互いに深いところで相容れることはないけれど、きっとこれはこれでいいのだ。
全てを理解したいなんて、驕りでしかないのだから。
傍らの人が身動ぎしようとも、ただただ、雨に打たれ続けた。
雨は全てを覆い隠してくれる。
綺麗なことも、汚いことも。
見たくないことすらも。
今はそれでいい。
この国も、私も、この人も。
いつかこの雨が晴れるとき、またわかることもあるだろう。
ただ今は、ここに居るときだけは、人もバケモノもない。
個という生き物なのだ。
体に降り注ぐ雨が、汚いものまで洗い流してくれることを願いながら、まだしばらくそのままでいたいと思っていた。
前回更新が、7月?
3ヶ月ぶりですね・・・いやぁ久しぶりすぎる。
その間プライベートでは、引越しをしていたりしました。
というか、今絶賛引越し中です。
一回で終わらせられなかったので、2回にわけて。
でも来月中には終わりのめどが立つと思うので、もう少しがんばります。
仕事では相変わらず悶々として過ごすこと多々ありです。
いやぁもうこちらは突破口が見つからなくてこまってます。笑
終電までやってたりするのは私が仕事ちゃんとやってないせいですがw
でもなんだか、どうにもこうにも・・・あああ~って感じにしかなりません←
やりたいことを仕事に出来るわけでもないこの世の中ですが。
私は一体何がしたいのかわかりません。
ついついネガティブになってしまう日々でありました。