呟きたいときくるところ
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「じかんよーとーまれー」
このてにーとまれー
しとしとと小雨降る中、小さな歌声が辺りに漂い消える。
歌い始めの頼りなさは、やがて流れるような流麗さに変わった。
歌は、好きだ。
心から。
「おーもいはゆびーをからめるように」
こーのよるをしーだいにもーやしてーゆーく
間延びしたような、真面目に歌っていないかのように聞こえるのは。
近くに馴染みのある気配があることを、知っているから。
羞恥を隠すことすら、下手だから仕方ない。
「ほーたるーこーのーほーしを」
まーいあーがれー
片手で屋根から落ちる雫を受け止める。
歌詞を見ないでも歌えるようになったのはいつだったか。
それもとうの昔で、思い出すことが出来ない。
けれどきっと、忘れないだろうことは想像に難くなかった。
だから、歌った。
忘れないだろうけれど。
忘れたくはなかったから。
「・・・・あなーたはおーしえて」
くれーたひとー
1番を歌い終えて、一息。
そこでようやく、ずっとそこにいたモノへ視線をやる。
雨の中、ようも堪えたものだ、と小さな笑いを含んで。
「寒くないの?」
「・・・平気だ」
かさりと僅かな音を立てて、気配が己の横に来るのを待つ。
案の定な答えに軽く笑った。
「主殿を放置しても構わないの?」
「・・・・・・・・今、忙しい」
「相手にしてもらえず暇だから、ここへ?」
「・・・・・・」
そう茶化すように言えば、気分を害したというでもなく、黙る。
けれど、それが答えになっているのも、互いに承知している。
胸の中に暖かな何かが広がるのを感じて、話をするでもなく、再び口を開いた。
隣に来たのは、その為だということもわかっている。
それがいつものことだから。
続きが聞きたいなら聞かせてあげよう
私はそれしか能がない
でもそれを、辛いと思ったことはないんだよ
笑って、今度は心から歌った。
傍らの忍に聞かせる、ただそれだけのために。
生まれたときから、これしか自慢できることはなかった。
その為に囚われの身になっても、特にいやだと思うこともなかった。
歌に力があると気づいたのは、その時。
それをどうとも思わなかったのも、今で思わないのも。
それが生い立ちに関係していたのかすら、わからなかった。
私は籠の鳥
そうして生まれ、生きてきた
これが私の「いつも」だから
辛いなんて思うほうが、おかしい
歌を聴きたいと願う人が居て、実際に聞いてくれる。
喜んでくれる、安心してくれる。
それが何よりの褒美となる。
蛍が生きて死ぬまでの
儚さと力強さ
それはまるで恋に似ている
歌詞の意味はわからないけれど
私の歌は、聴くものへ心を伝える
「・・・いつ聞いても、鳥肌が立つ」
「それは褒め言葉?」
歌い終え、呟かれた言葉に笑う。
沸き立つ想いは、命や恋の儚さは、人が全てを推し量るのは難しい。
だから個人の感情が重要になるものだけれど。
「お前の歌は、歌詞も曲調も馴染みがない」
「ま、そうでしょうね」
「だが」
「?」
「わけが解らぬままに、心が揺さぶられるようだ」
聞いた瞬間、笑ってしまったのは内緒だ。
そう思うのは、聞いたのが彼女だからということに、本人は気づかない。
主に真っ直ぐな想いを寄せる彼女だから、こそ。
「お粗末様でした」
こうして生きている命すら、蛍と同じように儚いものだと。
小さな縁側に座る二人には、わかっていた。
命は、儚い。
だからこそ、尊い。
雨は既に上がり、太陽が雲間から顔を覗かせている。
既に傍らの忍は姿を消し、己の主の元へと戻っていた。
(初かすが。難しいものです)(ちなみに歌は鬼束ちひろ『蛍』)
このてにーとまれー
しとしとと小雨降る中、小さな歌声が辺りに漂い消える。
歌い始めの頼りなさは、やがて流れるような流麗さに変わった。
歌は、好きだ。
心から。
「おーもいはゆびーをからめるように」
こーのよるをしーだいにもーやしてーゆーく
間延びしたような、真面目に歌っていないかのように聞こえるのは。
近くに馴染みのある気配があることを、知っているから。
羞恥を隠すことすら、下手だから仕方ない。
「ほーたるーこーのーほーしを」
まーいあーがれー
片手で屋根から落ちる雫を受け止める。
歌詞を見ないでも歌えるようになったのはいつだったか。
それもとうの昔で、思い出すことが出来ない。
けれどきっと、忘れないだろうことは想像に難くなかった。
だから、歌った。
忘れないだろうけれど。
忘れたくはなかったから。
「・・・・あなーたはおーしえて」
くれーたひとー
1番を歌い終えて、一息。
そこでようやく、ずっとそこにいたモノへ視線をやる。
雨の中、ようも堪えたものだ、と小さな笑いを含んで。
「寒くないの?」
「・・・平気だ」
かさりと僅かな音を立てて、気配が己の横に来るのを待つ。
案の定な答えに軽く笑った。
「主殿を放置しても構わないの?」
「・・・・・・・・今、忙しい」
「相手にしてもらえず暇だから、ここへ?」
「・・・・・・」
そう茶化すように言えば、気分を害したというでもなく、黙る。
けれど、それが答えになっているのも、互いに承知している。
胸の中に暖かな何かが広がるのを感じて、話をするでもなく、再び口を開いた。
隣に来たのは、その為だということもわかっている。
それがいつものことだから。
続きが聞きたいなら聞かせてあげよう
私はそれしか能がない
でもそれを、辛いと思ったことはないんだよ
笑って、今度は心から歌った。
傍らの忍に聞かせる、ただそれだけのために。
生まれたときから、これしか自慢できることはなかった。
その為に囚われの身になっても、特にいやだと思うこともなかった。
歌に力があると気づいたのは、その時。
それをどうとも思わなかったのも、今で思わないのも。
それが生い立ちに関係していたのかすら、わからなかった。
私は籠の鳥
そうして生まれ、生きてきた
これが私の「いつも」だから
辛いなんて思うほうが、おかしい
歌を聴きたいと願う人が居て、実際に聞いてくれる。
喜んでくれる、安心してくれる。
それが何よりの褒美となる。
蛍が生きて死ぬまでの
儚さと力強さ
それはまるで恋に似ている
歌詞の意味はわからないけれど
私の歌は、聴くものへ心を伝える
「・・・いつ聞いても、鳥肌が立つ」
「それは褒め言葉?」
歌い終え、呟かれた言葉に笑う。
沸き立つ想いは、命や恋の儚さは、人が全てを推し量るのは難しい。
だから個人の感情が重要になるものだけれど。
「お前の歌は、歌詞も曲調も馴染みがない」
「ま、そうでしょうね」
「だが」
「?」
「わけが解らぬままに、心が揺さぶられるようだ」
聞いた瞬間、笑ってしまったのは内緒だ。
そう思うのは、聞いたのが彼女だからということに、本人は気づかない。
主に真っ直ぐな想いを寄せる彼女だから、こそ。
「お粗末様でした」
こうして生きている命すら、蛍と同じように儚いものだと。
小さな縁側に座る二人には、わかっていた。
命は、儚い。
だからこそ、尊い。
雨は既に上がり、太陽が雲間から顔を覗かせている。
既に傍らの忍は姿を消し、己の主の元へと戻っていた。
(初かすが。難しいものです)(ちなみに歌は鬼束ちひろ『蛍』)
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