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ぱたり、ぱた ぱたたっ


時折屋根を打つ水滴の音を聴きながら、半覚醒の中静かに目を開けた
瞼がくっついてしまっているような感覚に陥り、瞬きをするもまた目を瞑る
既に日は動き、今は昼半ばを過ぎている頃だろう
寝具から目を瞑ったままもそりと頭を擡げ、暫しぼんやりする
寝起きが弱いのは、昔からだ
どれだけ長く年を経ようと、それだけは変わらない

「・・・目がー・・」

光の方へ向き、瞼を僅かに開けば強烈な光に慌てて目を伏せる
未だ光に慣れない目に、昼日中の日光はやはりまだ強かった
白い残光が残る程まぶしかったのは、太陽を直接見てしまったのかもしれない
痛みを感じ、目を伏せたあと感情の篭らない声で呻いた

寝具に再び伏せ、かつての己を思い返す
いつだって、朝はこうして2度寝をしていたものだった
学生であった頃、平和な世界で生きていたあの頃―――・・・







「め、目が、目があぁ~・・」

また、電気をつけっぱなしで寝てしまった。
寝起きで目を開け、見たものは煌々と明るい電球で。
思い切り見てしまったおかげで、フラッシュを見たあとのような残光が瞼の裏で瞬く。
某映画の大佐を意識しつつ呻き、また布団へと顔を伏せた。
既に起きるべき時間を10分過ぎており、あと5分程したらすぐに起きなければならない。
いつもぎりぎりなナユタは、それでも睡魔から逃れきることが出来ず、ぐずっていた。
そうして5分きっかりが過ぎ、ようやく嫌々布団から抜け出す。
これがナユタの目覚めの光景だった。

「おはよう」
「・・おあーよ」

学校に着き、始業ぎりぎりで教室へ入る。
遅刻に慣れてしまったのか、担任が甘いからなのか、その際急ぐこともなく。
のろのろと自分の席に着くナユタに、友人であるサチが声をかけた。
それにやる気のない声で応じ、ついでにあくびをかみ殺す。
それもまたいつものことであるので、呆れはしてもサチが怒る事はなかった。

「また今日も眠そうねー」

サチの多少呆れたような一言にも関心を示すこともなく。
ナユタは机にぺたりと沈みながら、2度目のあくびをしていた。

「・・・帰りたい」
「来たばっかりじゃないのよ」

心のままに呟けば、サチが呆れながらも即座につっこむ。
ナユタの口癖ではあるが、それに律儀に反応を返してくれるのがサチのいいところだ。

「ナユタってさ、もう隠居しちゃったほうがいい感じするよね」
「んー、私もそう思う・・てかもう今すぐしたい・・」
「何にもしなくて良くなったら、きっとずっと寝てるよね」

そう言って、サチが笑う。
ナユタも軽く本気でそれを望みつつ、笑って返事をした。

「本当にそんな状況になったら、きっと幸せだろうなぁ」







ふ、と意識が浮上する
いつの間にかまた寝てしまっていたらしく、日が随分と傾いていた
ここは高い山の頂付近で周りは雪で囲まれており、太陽はとても近い
その太陽の光も、僅かにしか小屋に届かなくなっていた
ナユタはむくりと起き上がると、薄暗くなっている室内を暫し見回した

懐かしい、幸せだった頃の夢を見ていた

ふらりと不安定な足取りで、ナユタは蝋燭に火を灯す
小さな蝋燭受けに置き、自身は小屋に唯一あるイスに腰を下し、その火を見つめた

笑いながら今のような静かな時間を切望していたあの頃

本当の幸せを、知らなかった

ちりちりと揺れる小さな炎が、部屋を僅かに明るくする
かつての光ある日常は、時の彼方に置いてきてしまった
今では人でなくなってしまった自分には、もう手の届くこともないものだ
その事実を知りながら、ナユタは心を静かに努めるしか術を持たなかった


外では飛蛇達が群れを成し、舞い続けていた
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