呟きたいときくるところ
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カナンは目覚め、やがて宿命の輪が廻りだす
これを止める手は、もうないの?
私はあの子達に何をしてやれるだろう―――・・・
タブラ・ラサ 7
がさり、と茂みを揺らして、カナンとナユタが現れる。
ようやく盗人とラムカに追いついたときには、既に局面が変わっていた。
剣を構え盗人に怒りを向けるラムカの顔を見つめて、カナンが心配げに眉を顰める。
ラムカの怒りは、カナンが傷つけられたことによるもの。
それをわかっているとは思えないが、ただ単にラムカが怪我をしないか心配なだけだろう。
ナユタはカナンの横顔を眺めながら思案し、カナンへ考えを伝えようと口を開いた。
「・・・・・あのね、カナン、」
「・・そうだ、ナユタ!」
「なぁに?」
カナンの声に、言葉が途中で遮られる。
何事かとばかりに目を見開き、ナユタは言葉の続きを促した。
「このままじゃラムカさんが危ないわ。
だから、あの子たちに助けてもらおうと思うの」
「あの子たち・・?」
そこまで言いかけて、はたと思いつく。
そうか、カナンにはその力があるのだった。
今はまだ覚醒してはいないが、その片鱗は既に見せ始めていたのだから。
あの子らを自分達の都合のいいように使うことは、少し躊躇われた。
けれど、それが宿命なれば、止める資格は私にはない。
「・・・・・カナンが、思うようにやってごらん」
「う、うんっ・・・!」
自分から言い出したことなのに、不安げな顔をする。
決意は固いのだろう、けれど、いまいちやり方に確信がもてないのだ。
「大丈夫、出来るよ」
ふわりと微笑み、カナンの頬に手を伸ばす。
両の手で優しく包み込み、カナンを真正面に見据え、安心させるように笑った。
「カナン、助けて欲しいって、願ってごらん。
心の底から、側に来て欲しいと。
そうしたらあの子達は聞き届けてくれるよ」
「・・・!」
ナユタの言葉に安心したのか、カナンの目が決意の色に染まる。
そうしてぎゅっと目を閉じ願った数分後、空から舞い降りてきた物たちがあった。
十数匹はいると思われる飛蛇、だ。
ナユタとカナンの周囲に下りてきた飛蛇たちに、ナユタが指示を出す。
「・・殺す必要はない。
霍乱するだけで良い。
ラムカを助けておあげ」
「・・ナユタ?」
まるで慣れているかのような指示の出し方、聞きなれぬ口調に、カナンが驚く。
今まで見知っていたナユタはどこへ行ってしまったのか、と。
戸惑うように名を呼ばれ、ナユタはカナンに振り向くと、にこっと笑って言った。
「大丈夫よ、さぁ、行こう」
その笑顔に、声に、安堵した。
カナンはナユタの手を握ると、号令を待つ飛蛇たちに願った。
「行って!」
勢い良く茂みから飛び出し、盗人を霍乱する飛蛇に、心底驚いた。
次いで、がさりと草葉を揺らして現れた人にも、度肝を抜かれる。
「ひよこ娘っ!!?」
死んだと思っていた、その人が目の前に立っていれば、誰だとて驚くだろう。
カナンが茂みから現れたと同時にナユタの姿も目に入る。
だが、カナンはラムカを見ていたが、ナユタのその目は飛蛇を追っていた。
飛蛇たちは群れになり、盗人を襲っていた。
「もういいっ!もうおやめ!」
苦しげな表情をしたナユタが、飛蛇たちに叫ぶ。
飛蛇たちはその声を聞くと、また空へ舞い上がっていった。
表情を歪めたのは、飛蛇を道具として使ってしまった己が愚かしくて、苦しかったからだ。
ナユタの発した声にラムカが怪訝そうな顔をするも、すぐに盗人に目をやる。
死んだと思ったはずの、あのチュミの髪を届けてくれた飛蛇が、盗人に牙をむいた。
盗人はそのまま事切れ、飛蛇も動かなくなった。
カナンは飛蛇を抱き上げ、涙を零した。
空には飛蛇が輪になり、中心には聖龍の姿があった。
翌日、ラムカは痛がるカナンの手の包帯を無理矢理剥ぎ取った。
その手の指には、確かに龍の証が現れていた。
これを止める手は、もうないの?
私はあの子達に何をしてやれるだろう―――・・・
タブラ・ラサ 7
がさり、と茂みを揺らして、カナンとナユタが現れる。
ようやく盗人とラムカに追いついたときには、既に局面が変わっていた。
剣を構え盗人に怒りを向けるラムカの顔を見つめて、カナンが心配げに眉を顰める。
ラムカの怒りは、カナンが傷つけられたことによるもの。
それをわかっているとは思えないが、ただ単にラムカが怪我をしないか心配なだけだろう。
ナユタはカナンの横顔を眺めながら思案し、カナンへ考えを伝えようと口を開いた。
「・・・・・あのね、カナン、」
「・・そうだ、ナユタ!」
「なぁに?」
カナンの声に、言葉が途中で遮られる。
何事かとばかりに目を見開き、ナユタは言葉の続きを促した。
「このままじゃラムカさんが危ないわ。
だから、あの子たちに助けてもらおうと思うの」
「あの子たち・・?」
そこまで言いかけて、はたと思いつく。
そうか、カナンにはその力があるのだった。
今はまだ覚醒してはいないが、その片鱗は既に見せ始めていたのだから。
あの子らを自分達の都合のいいように使うことは、少し躊躇われた。
けれど、それが宿命なれば、止める資格は私にはない。
「・・・・・カナンが、思うようにやってごらん」
「う、うんっ・・・!」
自分から言い出したことなのに、不安げな顔をする。
決意は固いのだろう、けれど、いまいちやり方に確信がもてないのだ。
「大丈夫、出来るよ」
ふわりと微笑み、カナンの頬に手を伸ばす。
両の手で優しく包み込み、カナンを真正面に見据え、安心させるように笑った。
「カナン、助けて欲しいって、願ってごらん。
心の底から、側に来て欲しいと。
そうしたらあの子達は聞き届けてくれるよ」
「・・・!」
ナユタの言葉に安心したのか、カナンの目が決意の色に染まる。
そうしてぎゅっと目を閉じ願った数分後、空から舞い降りてきた物たちがあった。
十数匹はいると思われる飛蛇、だ。
ナユタとカナンの周囲に下りてきた飛蛇たちに、ナユタが指示を出す。
「・・殺す必要はない。
霍乱するだけで良い。
ラムカを助けておあげ」
「・・ナユタ?」
まるで慣れているかのような指示の出し方、聞きなれぬ口調に、カナンが驚く。
今まで見知っていたナユタはどこへ行ってしまったのか、と。
戸惑うように名を呼ばれ、ナユタはカナンに振り向くと、にこっと笑って言った。
「大丈夫よ、さぁ、行こう」
その笑顔に、声に、安堵した。
カナンはナユタの手を握ると、号令を待つ飛蛇たちに願った。
「行って!」
勢い良く茂みから飛び出し、盗人を霍乱する飛蛇に、心底驚いた。
次いで、がさりと草葉を揺らして現れた人にも、度肝を抜かれる。
「ひよこ娘っ!!?」
死んだと思っていた、その人が目の前に立っていれば、誰だとて驚くだろう。
カナンが茂みから現れたと同時にナユタの姿も目に入る。
だが、カナンはラムカを見ていたが、ナユタのその目は飛蛇を追っていた。
飛蛇たちは群れになり、盗人を襲っていた。
「もういいっ!もうおやめ!」
苦しげな表情をしたナユタが、飛蛇たちに叫ぶ。
飛蛇たちはその声を聞くと、また空へ舞い上がっていった。
表情を歪めたのは、飛蛇を道具として使ってしまった己が愚かしくて、苦しかったからだ。
ナユタの発した声にラムカが怪訝そうな顔をするも、すぐに盗人に目をやる。
死んだと思ったはずの、あのチュミの髪を届けてくれた飛蛇が、盗人に牙をむいた。
盗人はそのまま事切れ、飛蛇も動かなくなった。
カナンは飛蛇を抱き上げ、涙を零した。
空には飛蛇が輪になり、中心には聖龍の姿があった。
翌日、ラムカは痛がるカナンの手の包帯を無理矢理剥ぎ取った。
その手の指には、確かに龍の証が現れていた。
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