呟きたいときくるところ
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
知っています、とはいえない
私は消えるものであらねばならない
そう思う反面、関わりたいと願ってしまう己の欲深さに
心から、辟易した
タブラ・ラサ 6
「・・・ひよこ娘!」
あれから更に数日、ようやっと夜中に山を降りてきた人影を、ラムカが呼び止めた。
荷車には案の定、数匹の飛蛇の遺体。
こうして得た飛蛇はとても良い銭になるのだろう。
それも新鮮なうちに届けられれば、だが。
ラムカの妨害に焦る盗人達の荷車を、カナンが見て慌てて茂みから飛び出す。
荷車に乗っていたのは、先日チュミの髪を天へ持って行ってくれた、あの飛蛇だった。
盗人が剣を持ってカナンへ向かった途端、ラムカが盗人を切って、殺した。
カナンを護るための行動だったはずなのに、それは。
「カナン!」
「おまっ!?」
盗人は、確かにラムカに切られた。
けれど盗人の剣は、過たず、カナンを刺し貫いていた。
カナンが悲しげに呟き倒れ伏す、その瞬間に、茂みからまた人影が飛び出す。
相棒を切られた盗人は一匹だけ飛蛇を抱え、逃げていった。
「ナユタ!何でお前までここに居る!?」
「カナン!カナン!!しっかりしなさい!」
驚いて問いただそうとするラムカを全力で無視して、カナンを叱咤する。
ラムカもその声に、慌ててカナンへ意識を戻した。
剣は胴を深く貫いているため、内蔵への損傷は免れないだろう。
きっと、このままではカナンは死んでしまう。
「・・・・この子を、使いましょう」
ナユタが、側に残された飛蛇の体を見つめ、ラムカに言った。
声は静かだが、重く圧し掛かるような怒りが込められているのがわかる。
カナンもこの子も、本当なら傷一つつけるのも嫌だったのに。
護れないのは、初めからわかっていても。
「そいつを!?」
「無駄に終わらせるくらいならやって損はないでしょう。
一か八か・・・でも、カナンが生き残る術はこれ以外にないわ」
ものすごい剣幕で押し切られるような形ではあるが、事は急を要す。
ラムカは覚悟を決め、飛蛇の腹を切り裂き、毒を口移しでカナンに食わせた。
ナユタはそれを確認すると、腹を切り裂かれた飛蛇を腕に抱いた。
そうしてそっと頬擦りして、地に下した。
その光景をラムカが見ることはなく、ただカナンに集中し続けた。
カナンは毒を入れたあと、腕から力が抜けた。
ラムカはカナンを抱く腕に力を籠めると、地にカナンを寝かせ、盗人を追っていった。
ナユタはラムカの後姿を見送り、飛蛇を悲しげに見つめた後、カナンの元へ行く。
そろそろ毒が効いて、目が覚める頃合だった。
「カナン、カナン・・?」
「う、く・・・あ、なゆ、た・・?」
「おはよう、カナン」
目が覚めてすぐ、見たのはナユタのいつもの笑顔。
その衣服に血や汚れがついている以外は、いつものナユタだった。
カナンはがばっと起き上がると、辺りを見回し、ラムカが居ないことに気づいた。
「はっ、な、ナユタ!ラムカさんは!?」
「盗人を、追いかけて行ったよ。
カナンは、彼を追いかける?」
「も、勿論!」
「・・そう」
小さく応えたナユタを尻目に、カナンが慌てて起き上がる。
そうして次の瞬間には走り出すと、ナユタが思ったときだった。
「ナユタ!行こう!」
「・・え?」
「ほらっ!早く行かなきゃラムカさん何するかわからないよ」
ナユタの声も聞かずに、手を引っ張り立たせる。
慌てすぎていて何も聞こえていないだけかもしれないが、それでもナユタの手を離そうとはしない。
心配なのだろう、ラムカが消えた先を見つめ、今にも走り出しそうに見える。
ナユタはそんなカナンを寸の間見つめると、にこりと笑い、逆に手を引っ張った。
「きゃあっ」
「ほらカナン、急がなきゃ」
「あ、そうね、行こう!」
そうして2人駆け出し、ラムカを追った。
走りながら、こうして一緒に居られるのはいつまでだろうと思うナユタが居た。
そして、この先の未来が揺らがぬよう、ただそればかりを願った。
その願いが叶わなくなるのは、もうすこしばかり、先の未来――――
私は消えるものであらねばならない
そう思う反面、関わりたいと願ってしまう己の欲深さに
心から、辟易した
タブラ・ラサ 6
「・・・ひよこ娘!」
あれから更に数日、ようやっと夜中に山を降りてきた人影を、ラムカが呼び止めた。
荷車には案の定、数匹の飛蛇の遺体。
こうして得た飛蛇はとても良い銭になるのだろう。
それも新鮮なうちに届けられれば、だが。
ラムカの妨害に焦る盗人達の荷車を、カナンが見て慌てて茂みから飛び出す。
荷車に乗っていたのは、先日チュミの髪を天へ持って行ってくれた、あの飛蛇だった。
盗人が剣を持ってカナンへ向かった途端、ラムカが盗人を切って、殺した。
カナンを護るための行動だったはずなのに、それは。
「カナン!」
「おまっ!?」
盗人は、確かにラムカに切られた。
けれど盗人の剣は、過たず、カナンを刺し貫いていた。
カナンが悲しげに呟き倒れ伏す、その瞬間に、茂みからまた人影が飛び出す。
相棒を切られた盗人は一匹だけ飛蛇を抱え、逃げていった。
「ナユタ!何でお前までここに居る!?」
「カナン!カナン!!しっかりしなさい!」
驚いて問いただそうとするラムカを全力で無視して、カナンを叱咤する。
ラムカもその声に、慌ててカナンへ意識を戻した。
剣は胴を深く貫いているため、内蔵への損傷は免れないだろう。
きっと、このままではカナンは死んでしまう。
「・・・・この子を、使いましょう」
ナユタが、側に残された飛蛇の体を見つめ、ラムカに言った。
声は静かだが、重く圧し掛かるような怒りが込められているのがわかる。
カナンもこの子も、本当なら傷一つつけるのも嫌だったのに。
護れないのは、初めからわかっていても。
「そいつを!?」
「無駄に終わらせるくらいならやって損はないでしょう。
一か八か・・・でも、カナンが生き残る術はこれ以外にないわ」
ものすごい剣幕で押し切られるような形ではあるが、事は急を要す。
ラムカは覚悟を決め、飛蛇の腹を切り裂き、毒を口移しでカナンに食わせた。
ナユタはそれを確認すると、腹を切り裂かれた飛蛇を腕に抱いた。
そうしてそっと頬擦りして、地に下した。
その光景をラムカが見ることはなく、ただカナンに集中し続けた。
カナンは毒を入れたあと、腕から力が抜けた。
ラムカはカナンを抱く腕に力を籠めると、地にカナンを寝かせ、盗人を追っていった。
ナユタはラムカの後姿を見送り、飛蛇を悲しげに見つめた後、カナンの元へ行く。
そろそろ毒が効いて、目が覚める頃合だった。
「カナン、カナン・・?」
「う、く・・・あ、なゆ、た・・?」
「おはよう、カナン」
目が覚めてすぐ、見たのはナユタのいつもの笑顔。
その衣服に血や汚れがついている以外は、いつものナユタだった。
カナンはがばっと起き上がると、辺りを見回し、ラムカが居ないことに気づいた。
「はっ、な、ナユタ!ラムカさんは!?」
「盗人を、追いかけて行ったよ。
カナンは、彼を追いかける?」
「も、勿論!」
「・・そう」
小さく応えたナユタを尻目に、カナンが慌てて起き上がる。
そうして次の瞬間には走り出すと、ナユタが思ったときだった。
「ナユタ!行こう!」
「・・え?」
「ほらっ!早く行かなきゃラムカさん何するかわからないよ」
ナユタの声も聞かずに、手を引っ張り立たせる。
慌てすぎていて何も聞こえていないだけかもしれないが、それでもナユタの手を離そうとはしない。
心配なのだろう、ラムカが消えた先を見つめ、今にも走り出しそうに見える。
ナユタはそんなカナンを寸の間見つめると、にこりと笑い、逆に手を引っ張った。
「きゃあっ」
「ほらカナン、急がなきゃ」
「あ、そうね、行こう!」
そうして2人駆け出し、ラムカを追った。
走りながら、こうして一緒に居られるのはいつまでだろうと思うナユタが居た。
そして、この先の未来が揺らがぬよう、ただそればかりを願った。
その願いが叶わなくなるのは、もうすこしばかり、先の未来――――
PR
この記事にコメントする。