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死に際に残した呪詛
想いとしては、どちらが強かろう?
タブラ・ラサ 3
「・・・轟く雷鳴は、天の聖龍たちの声、か・・・」
「え?」
「何でもありません、おばさん」
「そうかい?」
すっかり顔なじみになったおばさんが、笑ってまた作業を再開する。
度々小さく呟く独り言を、このおばさんはどうしてか欠片だけでも聞いているらしい。
ただのおばさんだと思っていたのに・・・どうしてそんなに気づくのだろう。
「おばさん、今日はこれで終わりにしましょう」
「おや、もう今日は十分作ったね、じゃ終わろうか」
にこにこと応対してくれるおばさんの笑顔に、癒される。
ここサンワの庄に来てから、ナユタは日々喜びが胸いっぱいになるのを感じていた。
今し方作り終えた篭をその辺に置きながら、幸せをかみ締める。
嬉しい、という思いが心から湧き出ている。
こうしている今なら、きっと空も飛べそうだ、とナユタは思った。
「お疲れ、ナユタはこれからどうするんだい?」
「カナンを捜しに行きます。お疲れ様でした」
ぺこりと頭を下げ、おばさんと別れる。
その足で、今頃山に居るであろうカナンを捜しに出かける途中、遠くで何か大きな音を聞いた。
それを聞いた途端、ぴくりと反応して足を止める。
「・・・今、岩が割れたね?」
確認のような独り言を呟き、音が聞こえたほうを見つめる。
きっと今、ラムカがティンを助けるために、剣で岩を割った。
この次は、羊の死体が見つかるはずだ。
飛蛇に食われてしまった、無残な死体―――――。
「・・・・・・・・・・・どこへ行こう」
そこまで考えて、これからの行き先に迷ってしまった。
こうしてぼんやり考えて突っ立っている間に、今頃カナンはチュミの家の前。
そうして次は領主に案内されて、聖龍の遺骨を見に行くだろう。
正確な場所を把握出来ていない今のナユタでは、きっと間に合わない。
「あぁ、夜が来る・・・」
飛蛇がやってくる。
懐かしい、あの子らが・・・。
「おや、ナユタ、まだこんなとこに居たのかいっ」
「おばさん・・」
「急いで小屋へお帰り、今夜は外へ出ちゃあいけない」
篭作りのおばさんが心配げに忠告をしてくれる。
それに微笑むと、一つ首を振った。
飛蛇は人を襲わない。
それも、ナユタなら、余計に。
「大丈夫、ありがとう、おばさん」
「あ、ナユタっ」
「おばさんは早くおうちへ帰ってください。家族が待っていますよ」
にこりと笑って、おばさんに背を向ける。
後ろでまだ何か言っているようだったけれど、聞こえなかったふりをした。
飛蛇が家畜を食らいにやってくる。
そこにラムカもカナンもいるだろう。
場所がわからなくても、飛蛇の気配なら追える。
ナユタにとっては、人よりも近しいものだから。
「・・・どうせなら、尾を切る前に帰してやりたいけどなぁ」
さくさくと土を踏みつつ、そんなことを考えた。
共に暮らした頃を、思い出す
ヒトではないモノとして、霞を食ろうて生きた、あの頃を
考えごとをしているうちに、目的地に着いていた。
少し遠くのほうで、ラムカがカナンを庇いつつ剣を構える姿が見える。
そこへ飛蛇が降りてきて、襲う――――直前。
「来ちゃダメ 空に帰って!!」
カナンが、叫んだ。
飛蛇は一旦躊躇した後、しゅるりと尾を巻いて帰っていった。
ラムカが驚いたようにカナンを見る。
きっと今頃、カナンはゆってみるもんですねとか言ってるんだろう。
ラムカたちが居るところからは少し離れていたため、ナユタの姿に気づいていない。
勿論、茂みのほうにいる領主やラサムからも見えていないだろう。
そこに、近寄ろうとは思わなかった。
何故か、尻込みしてしまったのだけれど。
きっとその方がいいと思ったから。
離れた場所から見守りながら、少し悲しい思いを覚えたナユタだった。
それでも文句は言わなかった
むしろ久しぶりのヒトの温もりで、涙が出そうだった
あぁ、こんなにも私は寂しかったのか―――
タブラ・ラサ 2
「ほあッ!」
「カナン!」
何個も積み重ねていた篭ごと、カナンが倒れる。
サンワの庄に着てから、既に数日。
見慣れてしまった光景ではあるが、実際本当にカナンはよく転んだ。
「大丈夫?だから、少しにしたらといったのに・・」
「えへへ・・大丈夫大丈夫ッ」
「あ、カナン!前・・っ」
「きゃーーーーー」
ナユタが心配して手を貸し、立たせたまでは良かった。
カナンはまた篭を重ね、大丈夫と繰り返し言って運ぼうとした足元に小石があったのだ。
案の定、またこけたカナンだった。
「・・・カナン、もう少し落ち着こうか」
頭を抱えつつ助言をするナユタは、それでも心のどこかでこの現状を楽しんでいた。
人と暮らすのは、やはりとても楽しいものだったから。
それにこの里の人々は、なんて暖かい―――。
「おいひよこ娘っ!」
「はいっ!え、あ、ラムカさん!?」
「ついて来い!」
「はい、てちょ、待ってくださーい!!!」
まるで嵐だ。
ラムカは突然現れると、こうしてカナンを連れて行ってしまうのだった。
ナユタは彼らの後ろ姿をため息をついて見送ると、また作業を再開した。
仕事はまだまだたくさんある。
休んでいる暇はないのだ。
サンワの庄に着て、少しずつ仕事を任されるようになってから。
初め、ナユタとカナンは大抵2人一組で動くようになっていた。
モノを知らないのは2人とも同じなので、簡単なことしかまだ出来ない。
けれど慣れてくると、カナンは特技による羊放牧で呼ばれ、ナユタはナユタで他で呼ばれるようになった。
自覚はしていなかったが、ナユタは結構手が器用だったらしい。
服を繕う、布を織る、篭を作る。
少しずつそんな作品作りを頼まれるようになっていた。
昔覚えて、それからは暇つぶしでしかやってこなかった技術。
ここで生きてくるとは、夢にも思わなかったことだ。
「暇つぶしでずうっとやってたことが、今ここで役に立つなんて・・・」
「え?何か言った?」
「いえ、何でもありません」
ぽつりと呟いた言葉を、後ろにいたおばさんが聞いていた。
けれどナユタは顔色一つ変えず、笑顔で返事をする。
表情を繕うことほど、簡単なことはない。
今までそうして生きてきたのだから。
返事をする間にも、一つ作品が出来ていた。
そうして離れ離れで仕事をしているうち、物語は少しずつでも、着々と進んでいた。
チュミとティン兄妹との交流、地上の聖龍探し、カナンの過去、それから特技云々。
ナユタは一つ一つこれから起こるべき事を思い返しながら、来るべき日を待った。
それすなわち、龍の覚醒の日を―――――。
ここサンワの庄でも
いつものように一日が過ぎていく
はず、だった――――
ひよこ娘と飛蛇使い
「働きまぁす!!」
一喝してやれば、青い顔で返事をし、くるりと背を向ける。
見た目少年に見える、ボロを来たその人は、胸はないが確かに少女だ。
ひょんなことから関わりを持ってしまい、怪我の手当てまでした、その上。
ここサンワの庄に行きたいと言っていたから、つい連れてきてしまったのだった。
けれど、ラムカは連れてきたことを既に後悔していた。
ラシワのじじいのおかげで里の秘密に気づかせてしまった。
このままおめおめと里の秘密を暴かせるわけにはいかない。
いくら行くあてのない奴だからと言っても、連れてくるんじゃなかった。
あんなひよこ娘――――。
「ん?」
ぴょこぴょこ忙しなく動き働くカナンを見ていた、視界の端っこで何かが揺れた。
反射的にそちらのほうを向けば、茂みの中からこちらを覗く一対の目と目があった。
数秒、沈黙。
ざくざくざくと無言で近づき、剣を突きつける。
おまけに顔もぐいと近づけ相手の顔をよく見てやった。
「おい」
「はい」
ぱちくり。
そんな表現がしっくりくるような動作で、瞬き一つ。
涼やかな小さな声で、返事をされた。
剣呑な声で言ってやったのに、何とも思っていないかのように、表情は歪まない。
心底から何の用か、と思っている・・風に見える。
「はい、じゃねぇ。そこで何してんだ」
「・・・何も・・・強いて言うなら、見物でしょうか」
かっちーん
そんな効果音が、頭の中に響いた気がした。
すらりと剣を一つ振り、不審者の首の突きつけた。
首と剣の隙間は、紙一枚程度。
それなのに、一切驚く仕種を見せない。
「・・・・・ごめんなさい、本当に、何も考えずここに来たので」
ぽつりと呟かれた言葉は、何故かとても重く悲しげだった。
悲しげな表情をしているわけではない、けれど、心が啼いている。
そんな印象を与えられる声だった。
「ら、ラムカさんっ!ちょ、ちょっと落ち着いてください!!」
後ろからひよこ娘、もといカナンにしがみつかれる。
おかげで、もう少しで首の皮を切ってしまうところだった。
「お前のほうが危ねぇんだよっ!」
「ご、ごめんなさいいぃ!!」
「君、大丈夫かね?」
ラムカがカナンを怒鳴りつけているうちに、ラムカの父である領主が話しかけていた。
フードを深く被っているので、見えるのは目と鼻と口、それくらいだ。
けれど、相手の目が思ったよりも澄んでいるので、不意を衝かれたように動きが止まる。
不審者は寸の間領主を見上げ、沈黙するも、ふわりと微笑んだ。
「・・ありがとう、大丈夫です」
まるで花のような微笑に魅了されたか、ラムカもカナンも固まってしまった。
そうして笑った時間はとても短かったけれど、それでも効果は絶大だったと言えよう。
不審者がフードを取る為俯き、また顔を上げる間、誰も身動きをしなかった。
「私は、ナユタといいます」
ナユタがフードを取ってからも、やはり寸の間、沈黙があった。
フードの下から現れたのは、白い肌の整った顔だった。
煙るようなまつげと、淡い栗色をした長い髪。
実際の身元が知れたわけではないのに、怪しいと思ったのは最初だけだった。
「・・・綺麗な人・・」
惚けたようにカナンが呟けば、はっと自分を取り戻したラムカがカナンをどつく。
何でですかぁっとカナンが抗議すれば、ラムカがうるせぇと突き放したりと途端に騒がしくなった。
それを見たナユタが楽しげに笑うと、ラムカが罰の悪そうに頭を掻く。
空気が和んだのは、カナンのおかげなのかもしれない、とナユタは思っていた。
「私は、行くあてもなく彷徨う旅人です。暫しの間、ここに置いてはもらえないでしょうか」
ナユタがそう言い出せば、ラムカが難しい顔をする。
身元不明で名前しかわからない不審者を、そうほいほいと里に入れるわけにもいかない。
腹のうちで何を考えているかわからないからだ。
けれどナユタの目を見れば、その考えも揺らいでしまいそうになる。
ナユタは、真っ直ぐな目をしているから。
「・・・何が出来る?」
「ラムカさんっ?!」
「ラムカ?」
しばらく思い悩んだ末、ラムカの口から出たのは、その一言だった。
カナンと領主が驚いて声をかける。
ナユタは寸の間きょとんとするが、すぐにラムカの質問に答えた。
「この手で出来ることは少ないですが、出来る限りであなた方の力となりましょう」
そういったナユタの目は、深い藍の色を帯びていた。
まるで永く生きた賢者のような、知恵者の目のように見え、ラムカは心を決めた。
「・・・・わかった」
「ラムカさん・・・」
「暫くの間だけだからなっ!働け!」
そうラムカが宣言した途端、カナンが歓声をあげた。
領主もほっとした顔をして、胸を撫で下ろしていた。
こうして、サンワの庄で新たな居候が2人増えた。
今後起こることを想像できていたのは、ただナユタ独りだけ――――
思い返してみても、私は今までの人生で何か残すことが出来ていなかった
共働きの両親と同居している祖父母と姉、それから鳥と魚が数匹
平凡な家庭で生まれ、平凡な人生を歩んできたと思われている私
万引きこそしていないけど、母の財布からお金を盗っちゃったり
学校をずる休みしなくても、授業をボイコットしちゃったり
イジメをしてなくても、先生の悪口なんか目の前で言っちゃったり
殴ったりはしなくても、ある期間友達を無視したり
要は、ものすごいちっちぇ人間だったわけだ
それを後悔はしている
うん、少しだけ
若さ故の過ちと言って流しているだけかもしれないけれど
言ってしまえば、私のような人間1人消えたところで、何の支障もない
そう、言いたいことはそれだけだ
そうして今私は、自分の生まれ育った世界ではない
別の、知らないようで知っている
不可思議な世界で生きていた
それも、人間とは呼べないような、そんなモノになって
人間じゃない
ヒトから化したモノだから
正しく、化物になってしまった私
ちっぽけな私には、当初、しばらくそのことが受け入れられなかった
まぁ容易に受け入れられる人なんて、多くないだろうけれど
少なくとも私のような小さくてせこい人間だったモノにとっては
とても重大なことで
でも覆すことは出来なくて
だから、何を言いたいのかと言えば
この世界に来て、自分の現状を把握した私は
そのまま、絶望してしまったわけである
それでそのまま、ふらふらと世界を渡り歩いた
腹も減らない
眠りも必要ない
だから私は、ただ旅を続けた
その間出会った様々な人に影響され、いろんなことに手を染めたりもした
何も考えず、人にはない力で悪いこともした
でもそうして過ごすうちに、このままでは虚しさがなくならないことに気づいた
色んな人に出会っても
自分は異色で、独りだったから
寂しさは変わらなかった
私はヒトと関わることをやめ、山に篭ることにした
道具なんかは何もいらない
必要最低限の布かなんかあればそれでいい
それだけを考え、山で過ごし、家族といえるものも出来た
そうして長い間を過ごして、何百年が過ぎようとした頃
自分の置かれている状況について考えることも出来た
今居る世界について考えることも出来た
ここに居る理由だけはどうしてもわからなかったけれど
少しは、ものがわかるようになっていた
そうして私は、住み慣れた山を離れ、ある場所へゆくことにした
物語が、始まる
だから、行かねば・・・ サンワへ――――
おめでとうございます
今年も何やら色々大変そうですが
よろしくお願いいたします(土下座)
話変わって。
私、帰って二日目、元旦に風邪を引きました。
おかげで望んでもないのに寝正月でしたよははっ。
もう少しご馳走食いたかったなぁ・・←食い気
でも、久しぶりにおでんや肉じゃがとか鍋とか。
こっちじゃ店でしか食えないものを食べられました。
うちでは1人なので、作りませんし、金もない赤貧学生ですから。
それだけでも良い正月でございました。
ただ、一昨日戻ってきたのはいいんですが。
未だに咳が出て辛い目におうております・・・。
おまけに咳止めの薬実家に忘れてきたらしく。
うちには解熱とか痛み止めしかないからなぁ・・・。
今日は夕方からバイトなので、正直それまでに治らないと辛い。
おまけにジミーに頭痛に苛まれているし。
新年早々、おみくじは大吉でしたが、ついてません。
明後日には学校も始まるなぁ。
冬休みは夏休みと同様、バイトで潰れたようなものです。
自業自得なのでなんともいえませんが・・。
バイト、少し減らさなくては・・・。
それでは。