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夫が殺された今
生きる望みもありません
亡き夫のあとを
追いたいと存じます

そう言って 親友は殺された

密書を運ぶため黒髪を切り 男を装い

なおその知らせは間に合わず

己が夫は一揆勢方々殺され

自分もまた捕らえられ

どれ程無念だったろう


「・・・まだ、二十歳やったんに」

ぼうっと柱に寄りかかりながら空を見上げ、呟く。
親友を亡くし、家も家族も一度に奪われ、放心して。
共に育った親友は、お嫁に行ってまだ5日も経たぬうちに、一揆が起こった。
夫は一揆に参加しそこで死んだ。
親友もまた、敵方の動きを知らせるため密書を携え旅をした末捉えられた。
敵方は若い親友を哀れと思い情けをかけようとしたらしい。
けれど、夫を殺した敵の情けをあの子が受けるわけもなく。

親友は、夫のあとを追っていった。

残された自分は、唯一の家族も一揆で殺され、戦場を彷徨う中ある人に拾われた。
私はきっと幸運だったのだろう、それでもこの虚しさは消えてはくれない。
保護された身で図々しくも、何をするわけでもなく無駄に生きている。
使用人がいるから特に何をする必要もない大きな屋敷だ。
誰にも責められることもなく、己に与えられた部屋から一歩も出ず。
日々、空を見上げて過ごす。
主はそれを許してくれているからと、それに甘えた。
ただ今は、虚しくて空しくて、心が死んでしまうのを辛うじて抑えていた。

「・・・・せやから、紀伊はあかんていうててん」

いつまでもいつまでも消えてはくれない、親友との思い出。
共に過ごした少女時代。
お嫁入りが決まった日。
嫁入りに行った日。
そして、旅に出る前日。

あんたは強いでしょ、泣かないで
これは夫を助けるため、村のみなを助けるためよ
だから止めたりなんてしないで
笑って見送ってよ

親友の綺麗な黒髪を切ったのは、自分。
敵方を欺くため男を装い、そういい残して親友は旅立った。
それから二度と、顔を見ることは叶わなかった。
知らせを受けた後、手元に残った彼女の形見を森に埋めた。
少女時代から彼女がお嫁に行くまで、2人の憩いの場にしていた場所だ。
大きな岩(達磨岩と呼んでいた)の下に2人で蹲り、色んな話をした。
家のことをやる傍らで、暇さえあればそこへ行った。
2人にとっての大事なところだった。

「・・・ほんとーは、旦那さんとの思い出の場所に埋めたれば良いんやけど」

そこは、知らないし。
何より彼女は、お嫁に行って僅か5日で夫と離れ離れになったのだ。
思い出など作る暇もなかったんではと思う。

「・・・・・・あぁ、会いたいなぁ、菊ちゃん」

ぼんやりと空を見上げたまま、頬を涙が伝っていった。
寂しくて仕方がなかった。

やがてゆっくりと、空が赤くなっていった。










これは、今も大阪付近の地域(地名忘れた←)に伝わるお菊という女性のお話を聞いて。
衝動的に書きたくなったものです。
秀吉亡き後の豊臣方と徳川方が争う、大阪夏の陣冬の陣。
その冬の陣の前にお嫁に行き、僅か5日で夫と離れることになった女性。
そして挟み撃ちがしたい豊臣方に促され一揆を起こしたはいいものの。
予想よりも早い徳川の動きを本陣に知らせるべく、密書を携えたお菊。
髪を切り、男装をして旅立ったものの、遅くて。
個別に撃破されてしまった、豊臣軍と一揆勢。
彼女の夫もまたその時討たれ、やがて彼女も捕まります。
まだ年若い彼女に情けをかけようとした徳川勢。
けれど彼女は冒頭の言葉を残し、殺されます。
後に彼女は奉られ、手毬歌も残っているそうです。

もしかしたら違うところもあるかもしれないけれど、大筋はこんな感じです。
意味わからないと思いますが、すいません満足です。
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