呟きたいときくるところ
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何かが喪われるということはやはり辛いことだ
例え何年何百年生きてきた化物だとしても
例えひとかけらの関係を持って来なかったとしても
それでも、喪うのは、悲しい
タブラ・ラサ 5
「ナユター、今日はお手伝い、行かないの?」
「うん、今日は暇くれるって」
共に寝起きした仲だから、随分打ち解けたカナンが、ナユタに問いかける。
朝目が覚めて、皆の手伝いに明け暮れる日々。
それでもナユタやカナンは固定の仕事がつくようになって、合間に他の手伝いをするようになる。
勿論仕事はいつでも湧いて出てくるので、休みなどないに等しい。
ナユタの場合、気落ちしていることを見抜かれ、急遽お休みを貰ったのだ。
いくらナユタが大丈夫といっても、おばさんはひかなかった。
おばさん曰く、「あんたは繊細なんだからたまには息抜かなきゃ」だそうだ。
何故か強気なところが、不思議と母親らしくて、余計切なくなったのは秘密だ。
「そうなの?じゃ、ゆっくり出来るね」
「本当は私がお休み貰ってる場合じゃないのに。カナンのほうが、辛いでしょう」
「ううん、大丈夫よ」
にこりと笑われ、返す言葉に詰まる。
そうしているうちにいくつかナユタに言い含め、カナンは小屋を出て行ってしまった。
カナンも何処かおばさんみたいだ、と思ったのは、当然誰にも言えない。
でもそこがとても愛おしく感じられたのが、少し不思議だった。
カナンがヤクをついでに連れて行ってしまったので、小屋にはナユタ独りになった。
静寂に包まれる、そう思った数秒後、何かしらの音が聞こえることに気づく。
無音の世界なんてない、周りが自然だというのなら、尚更。
風の音、草が擦れる音、動物の声、ヒトの声。
あらゆる音が、世界に溢れている。
昔いた山頂の小屋よりも遥かに多くの、音たちだった。
以前のところは周り全てが雪で埋もれていたから。
雪は音を吸収するので、かすかにしかわからない。
「・・・・次は、カナンが刺される?」
どこまで思い出したのか、わからなくなる。
壁に背を預け、頭をやや上に傾けながら、またも回想に耽る。
人食いが先か・・カナンが飛蛇の毒を食らうのが先か?
「・・・カナンが刺されるのが先だな」
目を瞑り、瞑想する。
その後にやっと、ラムカの幼馴染であるシン・・医師のラサムの息子が帰ってくる。
そこから人食いの話に繋がるはずだ。
話が進むのは、飛蛇を捕らえに行ったものたちが帰ってくるところからだ。
時は、夜。
「今日か、明日か」
ぱちりと目を開け、空を見つめる。
チュミが亡くなってから既に3日が過ぎている。
そろそろ来てもおかしくはないだろう。
カナンもラムカについてゆくから、今回くらいはナユタも行きたいと思った。
刺されるのを回避してやることは出来ないけれど、何か助けになれないだろうか。
「たまには行ってもいいよねぇ」
誰に確かめるわけでもなく、独り呟く。
決まりを破るつもりではないけれど、久方ぶりに懐かしい子らに会いたいと思った。
サンワへ来る前。
ナユタは自分の中で、一つ決め事を作っていた。
それ即ち、物語の内容を変えたりしないよう、必要最低限、関わらないようにすること。
ただそれだけ。
この世界のことに薄々気づいてから、大まかな部分を理解するまで。
大分永い時間がかかったが、気づいてからナユタは考えた。
物語の筋を曲げるのは、皆にとっても自分にとっても、きっと良くない。
だって、ハッピーエンドになってなんぼでしょう、この話、なんて。
意味の解らない持論を繰り広げるのもいいが、要はナユタが怖かっただけだ。
話に無駄に介入して、起こるべきことが起こらず、起こらなくていいことが起こる。
そうしてバッドエンドになってしまうかもしれないことが、何よりも怖いのだ。
カナンもラムカも、サニンも。
幸せになってくれたら、一番いいのだけど。
救われないで終わるなんて、絶対嫌だった。
愛着がある、見知らぬ人々。
決まりは自分の中だけの戒めではあったけれど、破る気はさらさらなかった。
ナユタが小心者だということでもあるが、何より、今のこの状態がベストだと思ったから。
全てが終わったとき、カナンやラムカの記憶に、ナユタは居なくていい。
そう思いながらも、悲しくなるのは否めなかった。
例え何年何百年生きてきた化物だとしても
例えひとかけらの関係を持って来なかったとしても
それでも、喪うのは、悲しい
タブラ・ラサ 5
「ナユター、今日はお手伝い、行かないの?」
「うん、今日は暇くれるって」
共に寝起きした仲だから、随分打ち解けたカナンが、ナユタに問いかける。
朝目が覚めて、皆の手伝いに明け暮れる日々。
それでもナユタやカナンは固定の仕事がつくようになって、合間に他の手伝いをするようになる。
勿論仕事はいつでも湧いて出てくるので、休みなどないに等しい。
ナユタの場合、気落ちしていることを見抜かれ、急遽お休みを貰ったのだ。
いくらナユタが大丈夫といっても、おばさんはひかなかった。
おばさん曰く、「あんたは繊細なんだからたまには息抜かなきゃ」だそうだ。
何故か強気なところが、不思議と母親らしくて、余計切なくなったのは秘密だ。
「そうなの?じゃ、ゆっくり出来るね」
「本当は私がお休み貰ってる場合じゃないのに。カナンのほうが、辛いでしょう」
「ううん、大丈夫よ」
にこりと笑われ、返す言葉に詰まる。
そうしているうちにいくつかナユタに言い含め、カナンは小屋を出て行ってしまった。
カナンも何処かおばさんみたいだ、と思ったのは、当然誰にも言えない。
でもそこがとても愛おしく感じられたのが、少し不思議だった。
カナンがヤクをついでに連れて行ってしまったので、小屋にはナユタ独りになった。
静寂に包まれる、そう思った数秒後、何かしらの音が聞こえることに気づく。
無音の世界なんてない、周りが自然だというのなら、尚更。
風の音、草が擦れる音、動物の声、ヒトの声。
あらゆる音が、世界に溢れている。
昔いた山頂の小屋よりも遥かに多くの、音たちだった。
以前のところは周り全てが雪で埋もれていたから。
雪は音を吸収するので、かすかにしかわからない。
「・・・・次は、カナンが刺される?」
どこまで思い出したのか、わからなくなる。
壁に背を預け、頭をやや上に傾けながら、またも回想に耽る。
人食いが先か・・カナンが飛蛇の毒を食らうのが先か?
「・・・カナンが刺されるのが先だな」
目を瞑り、瞑想する。
その後にやっと、ラムカの幼馴染であるシン・・医師のラサムの息子が帰ってくる。
そこから人食いの話に繋がるはずだ。
話が進むのは、飛蛇を捕らえに行ったものたちが帰ってくるところからだ。
時は、夜。
「今日か、明日か」
ぱちりと目を開け、空を見つめる。
チュミが亡くなってから既に3日が過ぎている。
そろそろ来てもおかしくはないだろう。
カナンもラムカについてゆくから、今回くらいはナユタも行きたいと思った。
刺されるのを回避してやることは出来ないけれど、何か助けになれないだろうか。
「たまには行ってもいいよねぇ」
誰に確かめるわけでもなく、独り呟く。
決まりを破るつもりではないけれど、久方ぶりに懐かしい子らに会いたいと思った。
サンワへ来る前。
ナユタは自分の中で、一つ決め事を作っていた。
それ即ち、物語の内容を変えたりしないよう、必要最低限、関わらないようにすること。
ただそれだけ。
この世界のことに薄々気づいてから、大まかな部分を理解するまで。
大分永い時間がかかったが、気づいてからナユタは考えた。
物語の筋を曲げるのは、皆にとっても自分にとっても、きっと良くない。
だって、ハッピーエンドになってなんぼでしょう、この話、なんて。
意味の解らない持論を繰り広げるのもいいが、要はナユタが怖かっただけだ。
話に無駄に介入して、起こるべきことが起こらず、起こらなくていいことが起こる。
そうしてバッドエンドになってしまうかもしれないことが、何よりも怖いのだ。
カナンもラムカも、サニンも。
幸せになってくれたら、一番いいのだけど。
救われないで終わるなんて、絶対嫌だった。
愛着がある、見知らぬ人々。
決まりは自分の中だけの戒めではあったけれど、破る気はさらさらなかった。
ナユタが小心者だということでもあるが、何より、今のこの状態がベストだと思ったから。
全てが終わったとき、カナンやラムカの記憶に、ナユタは居なくていい。
そう思いながらも、悲しくなるのは否めなかった。
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