呟きたいときくるところ
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夢を、ずうっと見ていた気がした
その一つ一つを覚えてはいないけれど
その夢たちは暖かくて優しくて
よくわからないけれど、涙が止まらなかった
その間に優しい手が涙を拭ってくれたのは、気のせい?
光雲の行く末4
「・・・・」
明るい日差しが、僅かなふすまの隙間から差し込む。
あぁ、朝なのだと思って、自然に目が覚めた。
ゆっくりと瞼をあけた途端に、光で目が眩んで、慌てて手を翳す。
随分と、闇の中にいた気がした。
「・・・・・・・・ぅ、(私の、声・・は・・?)」
僅かに、呻き声のようなものが漏れる。
思うようには出ないけれど、幽かになら、出る。
「・・あー・・・(声が、出る・・・)」
嬉しくて、涙が零れた。
声が出ないことがこれほどに不安だったのかと、少し笑って。
仰向けのまま腕で目を覆って、そのまま涙を流した。
「おはよう、お姫さん・・・おぉっ?!」
さらりとふすまが開けられて、現れたのは忍装束を着た佐助だった。
気配も足音もないのは、流石忍といったところだろうか。
唐突に現れた佐助は、千代が目覚めていることに驚いた。
「目、覚めたのかー、いやぁ良かった」
「・・?」
そこまで大げさに息を吐かれるほど、眠っていたわけではなかろうに。
千代はそこがわからず、きょとんと佐助を見つめた。
見つめられていたことに気づき、佐助は笑って千代の枕元に座った。
「お姫さん、もう3日も眠ってたんだぜ」
今日はもう4日目の朝さ
そう言われて、寸の間固まる。
3日も眠っていたといわれても、正直実感はわかない。
ただ、そういえば夢をいくつか見ていたな、くらいだ。
「でも、目が覚めて良かったよ・・・そろそろ飯食わないと、体が持たない」
そう言われて、何故か合点がいく。
目が覚めてから、腕を上げるのも正直辛かった。
体中に力が入らない感じがするのは、そのせいか、と。
「・・ぁ・・・・あ、り・・が・・と・・・」
上手く出ない声を必死に出す。
たった一言を捻り出すまでに、随分と体力を使った。
それでも、その一言に、満足した。
「お、声、出るようになったんだー・・・いやー、ほんと良かったなぁ」
感慨深げに、瞳を細めて言われて。
何故か、とても胸が温かくなった。
「お姫さん、涙くらい拭こうよ」
軽く笑われて、大きな手で拭われる。
その手の温かさに、夢うつつで涙を拭ってくれた手を思い出す。
もしかしたら、と思いつつも、言う必要はないように思われて。
ただ、猫のように、その手に頬を摺り寄せた。
その後、佐助が幸村とお館様に知らせてくれたのか。
彼らも見舞いに来てく、千代の目覚めを一様に喜んでくれた。
お館様は、まだ声の出にくい千代を気遣って、まだ何も言わなくていいと言った。
千代はありがたくその言葉に縋ることにし、けれど筆談で出自と名だけは伝えた。
私は、あなた達に害為す者ではないです。
そのことだけは、伝えたかった。
「気に負わずとも良い、養生せい」
そう言って笑ったお館様の顔を、千代は一生忘れることはないだろうと思った。
それから暫し後、伝えたいことがあるときは、筆談とジェスチャーで伝えることにした。
不思議と彼らはすぐに意を汲み取ってくれて、特に不便に思うことはなかった。
甲斐甲斐しくお世話をしてくれる若い女の人もつけてくれ、千代は随分と大事にされた。
そのことに若干の違和感を覚え、佐助に伝えたこともあった。
けれど、佐助は
「気にするなって、お館様も言ったろ?早く元気になれよ」
そう言って笑ったので、千代はひたすらに体力を取り戻すことに専念した。
彼らの足手まといにはなりたくない、その一心で。
ご飯を食べ、起き上がれるようになり、千代は2週間ほどで普通に生活できるようになった。
ただ、声が出しにくいのは相変わらずで、小さくか細い声しか出せない上。
流暢に話すことが、難しくなっていた。
千代の口数は必然的に激減したが、特に問題はなかった。
「さ、すけ」
「ん?」
ちょい、と衣を引っ張って名を呼ぶ。
そうして何かの仕種をするだけで、意を解してくれる。
理解しよう彼らが努力してくれているせいでもあるが、不思議とみながわかってくれた。
与えられた奥の部屋から徐々に移動するようになって、話したことのない人でも。
「はい、わかりました」
その一言で、千代が聞きたいことをわかってくれるのだった。
それが何だか不思議ではあったけれど、これほど都合の良いこともなかったので気にしないことにした。
そうして千代は信玄の拾い子として、城に住見続けた。
いつしか、千代が保護されて半年のときが流れていた。
その一つ一つを覚えてはいないけれど
その夢たちは暖かくて優しくて
よくわからないけれど、涙が止まらなかった
その間に優しい手が涙を拭ってくれたのは、気のせい?
光雲の行く末4
「・・・・」
明るい日差しが、僅かなふすまの隙間から差し込む。
あぁ、朝なのだと思って、自然に目が覚めた。
ゆっくりと瞼をあけた途端に、光で目が眩んで、慌てて手を翳す。
随分と、闇の中にいた気がした。
「・・・・・・・・ぅ、(私の、声・・は・・?)」
僅かに、呻き声のようなものが漏れる。
思うようには出ないけれど、幽かになら、出る。
「・・あー・・・(声が、出る・・・)」
嬉しくて、涙が零れた。
声が出ないことがこれほどに不安だったのかと、少し笑って。
仰向けのまま腕で目を覆って、そのまま涙を流した。
「おはよう、お姫さん・・・おぉっ?!」
さらりとふすまが開けられて、現れたのは忍装束を着た佐助だった。
気配も足音もないのは、流石忍といったところだろうか。
唐突に現れた佐助は、千代が目覚めていることに驚いた。
「目、覚めたのかー、いやぁ良かった」
「・・?」
そこまで大げさに息を吐かれるほど、眠っていたわけではなかろうに。
千代はそこがわからず、きょとんと佐助を見つめた。
見つめられていたことに気づき、佐助は笑って千代の枕元に座った。
「お姫さん、もう3日も眠ってたんだぜ」
今日はもう4日目の朝さ
そう言われて、寸の間固まる。
3日も眠っていたといわれても、正直実感はわかない。
ただ、そういえば夢をいくつか見ていたな、くらいだ。
「でも、目が覚めて良かったよ・・・そろそろ飯食わないと、体が持たない」
そう言われて、何故か合点がいく。
目が覚めてから、腕を上げるのも正直辛かった。
体中に力が入らない感じがするのは、そのせいか、と。
「・・ぁ・・・・あ、り・・が・・と・・・」
上手く出ない声を必死に出す。
たった一言を捻り出すまでに、随分と体力を使った。
それでも、その一言に、満足した。
「お、声、出るようになったんだー・・・いやー、ほんと良かったなぁ」
感慨深げに、瞳を細めて言われて。
何故か、とても胸が温かくなった。
「お姫さん、涙くらい拭こうよ」
軽く笑われて、大きな手で拭われる。
その手の温かさに、夢うつつで涙を拭ってくれた手を思い出す。
もしかしたら、と思いつつも、言う必要はないように思われて。
ただ、猫のように、その手に頬を摺り寄せた。
その後、佐助が幸村とお館様に知らせてくれたのか。
彼らも見舞いに来てく、千代の目覚めを一様に喜んでくれた。
お館様は、まだ声の出にくい千代を気遣って、まだ何も言わなくていいと言った。
千代はありがたくその言葉に縋ることにし、けれど筆談で出自と名だけは伝えた。
私は、あなた達に害為す者ではないです。
そのことだけは、伝えたかった。
「気に負わずとも良い、養生せい」
そう言って笑ったお館様の顔を、千代は一生忘れることはないだろうと思った。
それから暫し後、伝えたいことがあるときは、筆談とジェスチャーで伝えることにした。
不思議と彼らはすぐに意を汲み取ってくれて、特に不便に思うことはなかった。
甲斐甲斐しくお世話をしてくれる若い女の人もつけてくれ、千代は随分と大事にされた。
そのことに若干の違和感を覚え、佐助に伝えたこともあった。
けれど、佐助は
「気にするなって、お館様も言ったろ?早く元気になれよ」
そう言って笑ったので、千代はひたすらに体力を取り戻すことに専念した。
彼らの足手まといにはなりたくない、その一心で。
ご飯を食べ、起き上がれるようになり、千代は2週間ほどで普通に生活できるようになった。
ただ、声が出しにくいのは相変わらずで、小さくか細い声しか出せない上。
流暢に話すことが、難しくなっていた。
千代の口数は必然的に激減したが、特に問題はなかった。
「さ、すけ」
「ん?」
ちょい、と衣を引っ張って名を呼ぶ。
そうして何かの仕種をするだけで、意を解してくれる。
理解しよう彼らが努力してくれているせいでもあるが、不思議とみながわかってくれた。
与えられた奥の部屋から徐々に移動するようになって、話したことのない人でも。
「はい、わかりました」
その一言で、千代が聞きたいことをわかってくれるのだった。
それが何だか不思議ではあったけれど、これほど都合の良いこともなかったので気にしないことにした。
そうして千代は信玄の拾い子として、城に住見続けた。
いつしか、千代が保護されて半年のときが流れていた。
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