呟きたいときくるところ
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この世界で生きていくうちに
一つ一つ、現代との違いが見えてくる
以前はそうした違いが、大きなことのように思えて
もし行けたとしても、生きていくことは出来ないと思った
そうした考えは、いつの間に消えていったのだろう
光雲の行く末5
ひしゃくで汲んだ水を手にかけて、それで洗う。
お手洗いに行った後は、こうしてお手水を使うのが当たり前だ。
けれど、トイレはこの世界、水洗なんてあるわけがない。
個室とは言え、仮に設えた様な甘いつくり。
初めは無防備すぎるように思えて、抵抗があったけれど。
「・・・・(慣れって、すごい)」
ふぅと軽く息を吐きつつ、空を見上げた。
今ではそんなもの、当たり前にしか思わない。
それもそのはず。
千代が信玄に保護されてから、既に半年の日々が経っていた。
城に女中が居るため、千代にすることがあるわけではない。
なので、日がな一日のらりくらりと過ごしていた。
ぺとぺとと素足で廊下を歩き、たどり着いたのは幸村の居室。
さらりとふすまをあけてみても、当の部屋の主は居なかった。
特にそれを気にした様子もなく、千代は部屋の真ん中に立つ。
暇な日はこうして城の中を彷徨うのが日課になっていた。
幸村や佐助、信玄は勿論とても忙しい身。
けれど暇さえあれば、彼らも構ってくれるのが常だった。
そうした彼らの好意に甘えていることは、千代とて自覚している。
「・・・・(でもやっぱり、暇なものは暇なんだもん)」
現代で生きているときは、何故かとても忙しかったように思える。
学校にバイトで日々が飛んですぎ、1人暮らしだったため家事やなんかもある。
遊ぶのだって手を抜きたくないし、課題や定期テストなんかは更に手が抜けない。
こんなにぼんやりして日々を過ごすことに、憧れたときもあった。
「んー・・・(暇すぎると苦痛っていうことがわかったけど)」
体を伸ばしながら、そんなことを思う。
ここでは、やることがほとんどない。
ご飯も洗濯も掃除も、女中さんがやってくれる。
自分でやるといえば、お願いだからしてくれるなといわれてしまった。
仕事を、奪うなと。
わからないでもなかったけれど、そう言われて千代は空しくなった。
楽なのはいい、けれど、何も仕事がないというのは辛い。
自分が、いらないもののように思えてしまう。
そう思いはしたけれど、特に何かするわけでもなかった。
手伝いはしたい、けれど私では足手まといになるだけだ。
障害を持った自分では、きっと彼らもやりにくかろう。
彼らに迷惑をかけることだけは、心底嫌だった。
さらり、とふすまを開けて、部屋を出る。
そうして千代は自分の部屋へ戻っていった。
千代の一日は、特に何をするでもなく、こうして終わっていく。
平穏な何もない日々が、後に終わってしまうことは、今の千代にはわからなかった。
千代が幸村の部屋についた頃。
さらりとふすまを開けて千代の部屋に入る、佐助の姿があった。
「おーい姫さん、っと・・・居ないのか」
部屋の主が居ないことに気づくと、小さく肩を落とす。
一応きょろりと部屋を見回してみるも、結果は変わらなかった。
「・・ってなると、今日は多分旦那の部屋かな」
僅かな暇な時間が出来たので会いに来たが、千代は居なかった。
本当に僅かなので、ここ最近は千代が部屋に居ず、会えないことが多かった。
元気になり、城に馴染んだのは良いことだと思うが。
「んー・・・一応、行ってみっか」
ふすまを閉め、くるりと体を反転させる。
そうして歩き出そうとしたときだった。
「佐助っ佐助は何処におるか」
「お、旦那?」
「おう佐助、お館様がお呼びだ、行くぞ!」
「げっ・・・はーい・・」
角を曲がってきた幸村に連行され、またも千代とすれ違った佐助であった。
ちなみに。
佐助が千代をお姫さんと呼ぶのは、初め名を知らず、どう呼んでいいかわからなかったため。
農民には見えない白い綺麗な肌を持つ千代だから、姫と呼ぶことにしたそうだった。
千代がそのことについて言及すると、
「農民の娘は手とか荒れてるし、髪だってこんなに綺麗な子は居ないのさ」
だから、それでいいのだと言い切られてしまい、千代も恥ずかしくはあったが、気にしないことにした。
目が覚めてから自分の名を伝え、幸村と信玄が名で呼ぶようになって、それは変わらなかった。
一つ一つ、現代との違いが見えてくる
以前はそうした違いが、大きなことのように思えて
もし行けたとしても、生きていくことは出来ないと思った
そうした考えは、いつの間に消えていったのだろう
光雲の行く末5
ひしゃくで汲んだ水を手にかけて、それで洗う。
お手洗いに行った後は、こうしてお手水を使うのが当たり前だ。
けれど、トイレはこの世界、水洗なんてあるわけがない。
個室とは言え、仮に設えた様な甘いつくり。
初めは無防備すぎるように思えて、抵抗があったけれど。
「・・・・(慣れって、すごい)」
ふぅと軽く息を吐きつつ、空を見上げた。
今ではそんなもの、当たり前にしか思わない。
それもそのはず。
千代が信玄に保護されてから、既に半年の日々が経っていた。
城に女中が居るため、千代にすることがあるわけではない。
なので、日がな一日のらりくらりと過ごしていた。
ぺとぺとと素足で廊下を歩き、たどり着いたのは幸村の居室。
さらりとふすまをあけてみても、当の部屋の主は居なかった。
特にそれを気にした様子もなく、千代は部屋の真ん中に立つ。
暇な日はこうして城の中を彷徨うのが日課になっていた。
幸村や佐助、信玄は勿論とても忙しい身。
けれど暇さえあれば、彼らも構ってくれるのが常だった。
そうした彼らの好意に甘えていることは、千代とて自覚している。
「・・・・(でもやっぱり、暇なものは暇なんだもん)」
現代で生きているときは、何故かとても忙しかったように思える。
学校にバイトで日々が飛んですぎ、1人暮らしだったため家事やなんかもある。
遊ぶのだって手を抜きたくないし、課題や定期テストなんかは更に手が抜けない。
こんなにぼんやりして日々を過ごすことに、憧れたときもあった。
「んー・・・(暇すぎると苦痛っていうことがわかったけど)」
体を伸ばしながら、そんなことを思う。
ここでは、やることがほとんどない。
ご飯も洗濯も掃除も、女中さんがやってくれる。
自分でやるといえば、お願いだからしてくれるなといわれてしまった。
仕事を、奪うなと。
わからないでもなかったけれど、そう言われて千代は空しくなった。
楽なのはいい、けれど、何も仕事がないというのは辛い。
自分が、いらないもののように思えてしまう。
そう思いはしたけれど、特に何かするわけでもなかった。
手伝いはしたい、けれど私では足手まといになるだけだ。
障害を持った自分では、きっと彼らもやりにくかろう。
彼らに迷惑をかけることだけは、心底嫌だった。
さらり、とふすまを開けて、部屋を出る。
そうして千代は自分の部屋へ戻っていった。
千代の一日は、特に何をするでもなく、こうして終わっていく。
平穏な何もない日々が、後に終わってしまうことは、今の千代にはわからなかった。
千代が幸村の部屋についた頃。
さらりとふすまを開けて千代の部屋に入る、佐助の姿があった。
「おーい姫さん、っと・・・居ないのか」
部屋の主が居ないことに気づくと、小さく肩を落とす。
一応きょろりと部屋を見回してみるも、結果は変わらなかった。
「・・ってなると、今日は多分旦那の部屋かな」
僅かな暇な時間が出来たので会いに来たが、千代は居なかった。
本当に僅かなので、ここ最近は千代が部屋に居ず、会えないことが多かった。
元気になり、城に馴染んだのは良いことだと思うが。
「んー・・・一応、行ってみっか」
ふすまを閉め、くるりと体を反転させる。
そうして歩き出そうとしたときだった。
「佐助っ佐助は何処におるか」
「お、旦那?」
「おう佐助、お館様がお呼びだ、行くぞ!」
「げっ・・・はーい・・」
角を曲がってきた幸村に連行され、またも千代とすれ違った佐助であった。
ちなみに。
佐助が千代をお姫さんと呼ぶのは、初め名を知らず、どう呼んでいいかわからなかったため。
農民には見えない白い綺麗な肌を持つ千代だから、姫と呼ぶことにしたそうだった。
千代がそのことについて言及すると、
「農民の娘は手とか荒れてるし、髪だってこんなに綺麗な子は居ないのさ」
だから、それでいいのだと言い切られてしまい、千代も恥ずかしくはあったが、気にしないことにした。
目が覚めてから自分の名を伝え、幸村と信玄が名で呼ぶようになって、それは変わらなかった。
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