呟きたいときくるところ
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幸村が呼ばれた理由は、戦だった
時は戦国時代、例に漏れることなく甲斐の虎も動き出す
けれどそんなことは咲にはまだわからなくて
このまま一生が続くのだと無意識に思っていた
「ただいま戻ったでござる」
「たーだいまぁー・・・」
「おかえり、お2人さん。
佐助死にそうね、どうしたの」
歩いて戻ってきた2人を出迎える。
何やら佐助が疲れきっているようなので、不思議に思った。
夏はもう過ぎて、最近では特に過ごしやすいというのに。
「旦那が・・・甘味屋に居たんだけど」
「けど?」
「だんご・・100本注文してて」
「100って作るのも大変な数だよね。なんてはた迷惑な客なの」
「ぬぅ、いつものことだが」
「いつもそんな迷惑かけてるの、幸さん」
「迷惑などっ・・・かけておるのだろうか・・・」
「でも売り上げにはなるよね、いーんじゃないの、怒られてないなら」
「・・そうか」
「で、佐助はどうしてそんなんなってるの?」
「迎えに行った時、ちょうどだんごが出てきたときだったんだよ。
急げって言ったら猛スピードで食べ出して・・見てたら気持ち悪くなった」
「あー、確かに胸焼けしそうな光景ではあるね。
まぁ何でもいいけど、お館様がお待ちだよ」
そういえば、しまった!という顔で2人して走っていった。
きっと幸村がふすまを開け放った瞬間に信玄公に殴り飛ばされたりするんだろう。
師弟の殴り合いの光景は日常茶飯事で、来た当初は驚いたが今ではすっかり慣れてしまった。
むしろそれがないと、すわ病気か?と疑うようにもなった。
2人が行ってしまったあと、咲は呼ばれていないので縁側へと戻った。
独りは慣れている。
「皆良くしてくれるけど、忙しいんだもんね」
仕方のないことだから。
居候させてくれるだけありがたいというものだ。
否、殺されないだけましか。
目を瞑り、空を見上げる。
そう、殺されていないだけでも、咲は運が良いくらいなのに。
一国の主の下で居候、それも何の役目もないただの娘として、なんて。
「夢みたいなもんだよね、本当なら」
私が町娘で、この時代に生まれていたのなら
けれど咲が生まれたのは何百年もあとの、未来。
武田信玄や真田幸村は歴史の人物として学び、彼らの行く末さえ知っている。
そんな中で、咲は城から出ようとしたしたこともあった。
どれだけいい人たちであっても、恵まれていても。
それがもっと先だといえ死んでしまう未来を向かえるのなら、側に居ないほうがいいと思ったから。
共に過ごした人の死を見て平常心で居られるほど、咲は大人にはなれなかった。
「・・・あの時は、佐助が迎えに来てくれたんだっけ」
城を黙って抜け出してしまったから、心配してくれたんだ、と。
本当なら、信玄公に断らなければなかったのに。
お世話になった人で、せっかく城に居てもいいと言ってくれて。
そんな人に、出て行くなんて言うのは心苦しくて。
黙っていくほうが酷いこともわかっていて、けれど言えなかった。
「・・随分怒られたなぁ・・あの佐助がまじな顔しちゃってさ」
ふふ、と思い出し笑いをする。
今なら笑えるけれど、あの時は正直怖かった。
佐助があんなに怒るなんて。
城を出て、街道沿いを歩いていたまでは良かった。
次第に日が暮れて、時は夕暮れを通り越して黄昏になっていて。
あっという間に真っ暗になった。
「誰そ彼、ともいうんだよね・・本当にすれ違う人の顔さえ見えなかった」
街頭なんてない時代、夜の闇に怯えて、ただひたすらに歩いていた。
城下町はとうの昔に出てきてしまったから、戻ることも難しい。
けれど知識としては、夜に出歩くことは危ないということも、ちゃんと知っていて。
知っていたけれど、どうしようもなかった。
行く当ても目的もなく出てきたから。
「・・・で、本当に襲われちゃったんだっけ・・知ってるのになんて馬鹿だったんだろ」
そこで殺されて金品(ないけど)奪われて死ぬ運命だったのに。
殺される、と思った瞬間、死んでいたのは追いはぎのほうだった。
闇夜に月の光を浴びて立つ忍が、やっと本当に殺しもするのだと認めたのは、その時。
城は平和で、咲は護られていた。
「死にたいなら、他所で死んでくれって言ったっけ」
あの忍は真剣に、苦しげに、泣きそうになりながら。
頼むから、死ぬのなら自分の目の届かないところで死んでくれ、といった。
その目を見て、咲の胸が激しく痛んで、無意識に涙が出た。
苦しくて、悲しくて、申し訳なくて。
「んで、無意識に口から出たのは・・ごめんなさいの言葉だった」
それしか言えなかった、ともいえる。
それから泣いて泣いて・・泣き疲れた暁に、佐助が帰ろうといった。
咲は黙って連れて行かれて、城に帰ってからも大変だった。
本当は怒ろうと思ってたらしい幸村は、泣きはらした顔の咲を見て逆に佐助を怒鳴りつけたり。
信玄公はただ黙って咲の頭を撫で、ついでに動転しっぱなしの幸村を殴り飛ばしたり。
佐助は黙って幸村に怒られていたから、更に罪悪感でいっぱいになったり。
咲は色んな思いが溢れて、ついでに涙も溢れて止まらなくて、その日は結局疲れて眠ってしまった。
「それからはもう、この人たち絶対裏切らない、悲しませたりしないって誓ったんだ」
例えばそれで自分の命が危なくなろうと、絶対二度としない、と。
それから信玄や幸村、佐助がいるこの城が、咲の居場所になった。
「覚悟は決めた・・もう迷わない」
彼らが死んでしまうことを、いやだけど受け入れることにした。
人は誰でも死んでしまうものだから、と無理矢理納得させて。
それまで彼らの側に居られるよう、少しずつ侍女たちの真似事を始めた。
まかないを作らせて貰ったり、掃除をしたり。
それは本当に小さなことだけれど、無駄なことではないから。
「このままが続くといーなぁ」
心からそう思った。
それが長く続かないことを、頭のどこかでわかっていながらも。
出来るだけ長く続くことを、ただ願った。
時は戦国時代、例に漏れることなく甲斐の虎も動き出す
けれどそんなことは咲にはまだわからなくて
このまま一生が続くのだと無意識に思っていた
「ただいま戻ったでござる」
「たーだいまぁー・・・」
「おかえり、お2人さん。
佐助死にそうね、どうしたの」
歩いて戻ってきた2人を出迎える。
何やら佐助が疲れきっているようなので、不思議に思った。
夏はもう過ぎて、最近では特に過ごしやすいというのに。
「旦那が・・・甘味屋に居たんだけど」
「けど?」
「だんご・・100本注文してて」
「100って作るのも大変な数だよね。なんてはた迷惑な客なの」
「ぬぅ、いつものことだが」
「いつもそんな迷惑かけてるの、幸さん」
「迷惑などっ・・・かけておるのだろうか・・・」
「でも売り上げにはなるよね、いーんじゃないの、怒られてないなら」
「・・そうか」
「で、佐助はどうしてそんなんなってるの?」
「迎えに行った時、ちょうどだんごが出てきたときだったんだよ。
急げって言ったら猛スピードで食べ出して・・見てたら気持ち悪くなった」
「あー、確かに胸焼けしそうな光景ではあるね。
まぁ何でもいいけど、お館様がお待ちだよ」
そういえば、しまった!という顔で2人して走っていった。
きっと幸村がふすまを開け放った瞬間に信玄公に殴り飛ばされたりするんだろう。
師弟の殴り合いの光景は日常茶飯事で、来た当初は驚いたが今ではすっかり慣れてしまった。
むしろそれがないと、すわ病気か?と疑うようにもなった。
2人が行ってしまったあと、咲は呼ばれていないので縁側へと戻った。
独りは慣れている。
「皆良くしてくれるけど、忙しいんだもんね」
仕方のないことだから。
居候させてくれるだけありがたいというものだ。
否、殺されないだけましか。
目を瞑り、空を見上げる。
そう、殺されていないだけでも、咲は運が良いくらいなのに。
一国の主の下で居候、それも何の役目もないただの娘として、なんて。
「夢みたいなもんだよね、本当なら」
私が町娘で、この時代に生まれていたのなら
けれど咲が生まれたのは何百年もあとの、未来。
武田信玄や真田幸村は歴史の人物として学び、彼らの行く末さえ知っている。
そんな中で、咲は城から出ようとしたしたこともあった。
どれだけいい人たちであっても、恵まれていても。
それがもっと先だといえ死んでしまう未来を向かえるのなら、側に居ないほうがいいと思ったから。
共に過ごした人の死を見て平常心で居られるほど、咲は大人にはなれなかった。
「・・・あの時は、佐助が迎えに来てくれたんだっけ」
城を黙って抜け出してしまったから、心配してくれたんだ、と。
本当なら、信玄公に断らなければなかったのに。
お世話になった人で、せっかく城に居てもいいと言ってくれて。
そんな人に、出て行くなんて言うのは心苦しくて。
黙っていくほうが酷いこともわかっていて、けれど言えなかった。
「・・随分怒られたなぁ・・あの佐助がまじな顔しちゃってさ」
ふふ、と思い出し笑いをする。
今なら笑えるけれど、あの時は正直怖かった。
佐助があんなに怒るなんて。
城を出て、街道沿いを歩いていたまでは良かった。
次第に日が暮れて、時は夕暮れを通り越して黄昏になっていて。
あっという間に真っ暗になった。
「誰そ彼、ともいうんだよね・・本当にすれ違う人の顔さえ見えなかった」
街頭なんてない時代、夜の闇に怯えて、ただひたすらに歩いていた。
城下町はとうの昔に出てきてしまったから、戻ることも難しい。
けれど知識としては、夜に出歩くことは危ないということも、ちゃんと知っていて。
知っていたけれど、どうしようもなかった。
行く当ても目的もなく出てきたから。
「・・・で、本当に襲われちゃったんだっけ・・知ってるのになんて馬鹿だったんだろ」
そこで殺されて金品(ないけど)奪われて死ぬ運命だったのに。
殺される、と思った瞬間、死んでいたのは追いはぎのほうだった。
闇夜に月の光を浴びて立つ忍が、やっと本当に殺しもするのだと認めたのは、その時。
城は平和で、咲は護られていた。
「死にたいなら、他所で死んでくれって言ったっけ」
あの忍は真剣に、苦しげに、泣きそうになりながら。
頼むから、死ぬのなら自分の目の届かないところで死んでくれ、といった。
その目を見て、咲の胸が激しく痛んで、無意識に涙が出た。
苦しくて、悲しくて、申し訳なくて。
「んで、無意識に口から出たのは・・ごめんなさいの言葉だった」
それしか言えなかった、ともいえる。
それから泣いて泣いて・・泣き疲れた暁に、佐助が帰ろうといった。
咲は黙って連れて行かれて、城に帰ってからも大変だった。
本当は怒ろうと思ってたらしい幸村は、泣きはらした顔の咲を見て逆に佐助を怒鳴りつけたり。
信玄公はただ黙って咲の頭を撫で、ついでに動転しっぱなしの幸村を殴り飛ばしたり。
佐助は黙って幸村に怒られていたから、更に罪悪感でいっぱいになったり。
咲は色んな思いが溢れて、ついでに涙も溢れて止まらなくて、その日は結局疲れて眠ってしまった。
「それからはもう、この人たち絶対裏切らない、悲しませたりしないって誓ったんだ」
例えばそれで自分の命が危なくなろうと、絶対二度としない、と。
それから信玄や幸村、佐助がいるこの城が、咲の居場所になった。
「覚悟は決めた・・もう迷わない」
彼らが死んでしまうことを、いやだけど受け入れることにした。
人は誰でも死んでしまうものだから、と無理矢理納得させて。
それまで彼らの側に居られるよう、少しずつ侍女たちの真似事を始めた。
まかないを作らせて貰ったり、掃除をしたり。
それは本当に小さなことだけれど、無駄なことではないから。
「このままが続くといーなぁ」
心からそう思った。
それが長く続かないことを、頭のどこかでわかっていながらも。
出来るだけ長く続くことを、ただ願った。
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